第35話:好きな人の好きな人には好きな人がいる10
「先生のおっぱい……」
ふにふに。
「痴女ですかあなたは!」
「私のことは兄さんと呼んでください!」
「出来るわけないでしょう!」
まっこと以てその通り。
ワンワンニャーニャー。
喧々諤々。
丁々発止。
そんな感じ。
「では兄さんを何とも思ってないのですか?」
「男の娘ですし」
それもその通り。
「八聖刹那とは?」
「あー、無い無い」
苦笑して申し訳程度に手を振る。
「単なる幼馴染み」
残酷な言葉を吐く。元より是空の眼には烏丸茶人しか映っていない。
「刹那とは子どもの頃から一緒なんです」
笑う。
「兄さんほどでは無いにしてもイケメンでしょう?」
「そこそこ女子にはモテますよ?」
色々と八聖に女子が近づくのは是空も幼馴染みだから把握している。
「けど一緒に居るが当たり前で、ほとんど身内みたいな物なんです」
カラカラと笑う。
「有り得ますか? 身内で恋愛とか……」
「有り得ます」
久遠にとっては有り得る。何せ血の繋がった実の兄を愛しているのだから。生まれたときから一緒に居て、生命の伴侶に選ぶほどの重い価値。
「そうでしたね」
是空は困った顔で笑う。
「先生は紅蓮さんに首っ丈……」
「ええ」
「でも近親相姦は推奨されませんよ?」
「結婚だけが人の全てでは無いでしょう」
要するに結婚や子作りしなければ愛を囁くに不可分は無い。久遠にとっての恋愛とは紅蓮に全てを捧げる捨て身の焼き討ちだ。
「ですか~……」
是空は、
「敵わない」
と痛みを吐き出す。
「目の前に烏丸茶人先生が居る」
その上で、
「自身が眼中に無い」
を定義し、
「同性愛だししょうがない」
そんな結論に至る。
「ま、わかってはいましたけどね」
チャプンと肩まで浸かる。久遠の近親相姦も推奨されないが、是空の久遠に対する慕情もまた社会にとっては少数派だ。
「恋愛の何と難しいこと」
久遠にしろ是空にしろ嘆息せざるを得なかった。お互いに禁忌の恋愛を夢見ている点では類似する。
「はぁ」
嘆息。二人のソレは互いに、
「湯にのぼせたため」
と解釈された。中々恋愛が上手くいかないのも青春の一つではあろうが。
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