第21話:烏丸茶人のブラコン11


 これから妹とデート。その通りであり、論理的帰結でもある。そういう久遠はジャケット姿。特に衣装に極まったワケでもないが素が良いので美少女性は損なわれない。


「久遠も可愛いですよ」


「光栄です!」


 愛する兄に褒められる。それはブラコン妹には最大級の賛辞だ。そんなこんなで互いに互いを意識していると、


「ピンポーン」


 と玄関ベルが鳴った。


「?」


 首を傾げる久遠。


「来ましたね」


 紅蓮には予想通りだ。


「どなたでしょう?」


 久遠が問う。


「是空無明です。先生」


「…………」


 久遠の口がへの字に歪む。


「まぁまぁ」


 ポンポンと紅蓮が肩を叩いた。


「いいじゃないですか。一緒しても……」


「兄さんが呼んだので?」


「有り体に言えば」


 実際にその通りではある。


「先生!」


 玄関に上がるなり是空は久遠に抱きついた。興奮しているらしい。息の在り方も少し激しかった。一種興奮しているとも言える。


「何故あなたが……」


「先生と一緒したいです」


「そっちの趣味はないのですけど……」


 ブラコンよりはマシだと思うけど……。


 紅蓮は心中で反論した。


「オン・ソチリシュタ・ソワカ」


 印を切る。


「兄さん?」


「はあ」


「どうにかしてください」


「ファンサービスと思えば?」


「それもどうかと」


 ムスッと不機嫌になる。空気の読めない是空はギュムッと久遠の胸に顔を埋めていた。


「先生……」


 その表情は恍惚。あるいは光悦。酒に酔うように女子に酔う。


「そうなりますよね」


 紅蓮には他人事だ。


「兄さん……!」


「はいはい?」


「どうにかしてください」


「無理じゃないかなぁ」


「是空さん?」


「兄さんって呼んで良いんですよ?」


「私にとって兄さんは兄さんだけです」


「ふにゃ~」


「離しなさい」


「先生はいい匂いがしますね」


「変態!」


「はぅあ!」


 罵倒された興奮する是空だった。


「先生の兄さん」


 是空が言う。


「何でしょう?」


 少し素直に紅蓮は応対する。


「今日は何処に行くんですか?」


「某都の秋葉原」


「にゃ~」


 久遠の胸に顔を埋める是空だった。


「だから止めてくださいと……!」


「久遠にも天敵は居たのですか……」


 言葉にせねども少し驚く紅蓮だった。


「先生~」


「離しなさい!」


 とりあえずは三人で秋葉原に出向くのだった。

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