13 晴れの舞台
☆
「兄様、酷いではありませんか?僕が一目惚れをしたことを知りながら」
「王子として、令嬢の心を傷つけたケジメを付けさせただけだ」
オピタル王子様は、弟、ルース王子に淡々と告げた。
「私はあの舞踏会で、白粉にまみれた令嬢を見て、その美しさにすぐに気がついた。他の令嬢にはない繊細な心を持った特別な女性だと直感で思ったんだ。だから、すぐに助けた。ルースは白粉を拭われた顔を見て、その美しさを知ったのだろう。それでは遅いのだ。後れを取った自分の未熟さを自覚するといい」
「もう後悔だらけだよ」
「王子として、成長するためにミルメール嬢に謝罪に行かせていた。これからは心の目を養って、自分の伴侶を探すといい。ルースが選んだレディーでは、後々、苦労するだろう」
「あの子は、失敗したと思ったよ」
「クククク……」
オピタル王子様は弟を見て、笑っている。
「正式な婚約の書状を出して、ステレオン伯爵から了承の書状が届いた。すまないが、ミルメールは私の妻になることになった。これからは近づくな」
「兄様、酷いです」
「この宮殿に嫁に来るのだ。毎日、顔は見られるであろう」
ルース王子は、頬を膨らませ、そっぽを向いた。
結婚式はすぐにでも行われる。
今はドレスができあがるのを待っている。
☆
ミルメールの17歳の誕生日に結婚式が行われた。
教会に描かれた天使のような面影のある花嫁だった。
ミルメールはマーキュリー王国の王太子であるオピタル王子と結婚した。
そして王妃となった。
学校に籍は残っているが、護衛が大変なので、退学する予定だ。
グルナはミルメールの従者として、王宮にあがった。
美しいウエディングドレス姿を見て、妹にも着せてやりたかったとグルナは思った。
それでも、妹にそっくりのミルメールのウエディングドレス姿を見ると、妹が着ているような気分になってくる。
どうか幸せになって欲しいと願いながら、ミルメールの晴れ姿を見続けた。
逃亡者のグルナは、死のある場所にはいられない。
王宮で死が訪れない事を願って、魔力を消し、ミルメールの世話を焼く。
今はそれが幸せだった。
・・・・・・・・・・・・
読んでくださりありがとうございます。
『1000年聖女♡悪魔に魅せられて』
これにて、終了となります。
続編はグルナのお話になりましたが、グルナはこれからも逃亡者として隠れながら人間界で暮らしていくと思います。
本来、心の優しいグルナにも幸せになって、欲しいと思いますが、グルナは妹の魂を食べて、体の中に取り込んでいるので、結婚も次の魂の契約もしないと思います。
感想などありましたら、どうぞお気軽に……。
1000年聖女♡悪魔に魅せられて 綾月百花 @ayatuki4482
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