第5話 200年前
☆
200年前、魔界と人間界は決別した。人間達は反乱を起こし、魔族に襲いかかってきた。怒った魔王は人間界と魔界の間に大きな山を造った。
しばらくの間、魔界は平和になった。しかし、狂気じみた人間達は大きな山に穴を掘り、魔界を攻めてきた。
また戦いが始まった。魔王一族のレオンも戦わなくてはならなかった。
その戦いの最中に、アリエーテの魂の気配を感じた。
どちらの世界に生まれ変わったのかも分からず、戦いの最中にレオンはアリエーテを探した。
戦闘しながらの捜索は難航した。
魔界と人間界の戦いは、20年と長くに渡って続いていた。
やっと魔界から人間を追い出し、魔王は掘られた穴に結界を張った。スライムとゴブリン一族を住まわせ、人間が入ってこないように監視をさせた。
アリエーテをやっと探し出す旅に出られると思ったとき、レオンに縁談の話が来た。
相手は魔族の公爵家のお嬢様だった。
美しいお嬢様は、16歳と若かった。
昔のアリエーテを思い出すが、美しいお嬢様はアリエーテではなかった。
レオンは迷うことなく縁談を断った。
兄の魔王は、アリエーテの魂を追いかけているレオンに、魂を追いかけることを諦めさせようとしていた。
一つの魂を捕まえることは難しく、不可能だと言われていた。
転生の時期もどこに生まれるのかも分からない。
もしかしたら、生まれてきた魂はアリエーテの姿をしてないこともある。
「男に生まれていたらどうする?」
兄の言葉は、レオンにとって現実を突きつけられているようだった。
確かに魂が同じでも、女に生まれるとは限らない。
兄は、別れた頃のアリエーテに似た娘を探し出してきていた。
それでも、レオンは兄の言葉を突っぱねた。
「必ず、アリエーテを探し出してやる」
レオンの執念に、兄が折れた。
婚約は破談になり、レオンはまたアリエーテの魂を探しに出かけた。
レオンはアリエーテを探し続けた。魔界にその姿がないことがわかり、人間界に飛んだ。
人間界は、まだ発展途上だった。神になった者がいて、国王になった者がいる。民はまだ浮浪していた。
アリエーテは公爵令嬢の長女でありながら、女性騎士になっていた。馬に乗り部下を連れて、国作りをしていた。
年齢はおそらく、30歳を超えているのではないかと思われた。
女性に生まれ青い瞳を持っていたが、いつも長い髪だったアリエーテは髪を短く切り、凜々しく男性騎士より男らしく見えた。
生まれる時代が悪かったのだと思った。レオンは人間界に留まり、アリエーテの人生を見届けた。
アリエーテは一生を男として過ごし、45歳で命を落とした。
力は男性には及ばない。崩落してきた木材の下敷きになり呆気なく死んだ。
一生を、人間界を造るために献げた。部下はアリエーテの死を悼み、立派な葬儀が行われ、教会の墓地に埋葬された。最後まで女でありながら男として生きた人生だった。
レオンは見守ることしかできなかったが、潔いアリエーテの人生を見届けた。
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