主人公の会そのいち。
はたまた時空が歪みに歪んだ白河邸の談話室にて。
隆之「えっと、」
瞳也「これは、」
春太「どういうことなんでしょうね……」
目を醒ますと談話室にいた三人。
顔を見合わせ、首をひねる。
春太「──うーんと、とりあえず自己紹介、しましょうか?」
隆之「そ、そうだね」
瞳也「あ、あぁ」
春太「僕は、
(※きみと僕とキミ。から)
瞳也「俺は
(※夜行逢鬼から)
隆之「あ、同じです」
瞳也「お、そうなのか?」
隆之「はい。並木町に住んでる、
瞳也「ん? なんで最後濁したんだ?」
春太「どうしてですか?」
隆之「……ここが、俺の家なんです」
春太「え?」
瞳也「ふぁっ?」
隆之「いや、でもなんでこんなところにいるかはわからないんです。なんていうか、目を醒ましたらここにいた、みたいな」
春太「あ、それ僕も」
瞳也「俺と同じじゃねえか」
???「ヒヒヒ。いいねぇ、上手いこと筋書きが進んでやがる」
隆春瞳「「「なんだこの黒いもやもやした気持ち悪い奴っ!?」」」
???「まあ、この場合人格だけを借りてるからなぁ。姿まではお披露目できねえさ。──ま、それよりさ。こうやって集まった以上はもっと楽しい話をしようぜ」
隆之「おまえが俺たちをここに連れてきたのか?」
春太「な、なんなんですかこいつホントに」
瞳也「怪物……と見るべきか?」
春太「へ? 怪物?」
隆之「あれ。知らないのか、御子柴くん」
春太「え、真堂さんも知ってるんですか? え、なに、この置いてけぼり感」
瞳也「それより──楽しい話ってのは、なんのことだ? 化け物」
???「……題して、『主人公の会』!!」
隆春瞳「「「……」」」
???「てめえらは全員、ある物語の主人公だ。そのうえでオレが司会を務め、いくつか議題を提案し、おまえらにそれを話し合ってもらう。ま、簡単なディベートさ」
春太「ディベート?」
隆之「何が目的なんだよ」
???「目的なんざねえさ。これも偽物神様の気まぐれってね。ってことで、まず最初の議題が──」
隆之「ゴクリ」
春太「どくどく」
瞳也「どどどどどどど、じゃじゃん」
???「まず『それぞれの主人公たちの魅力』だ」
隆之「え?」
春太「主人公たちの、」
瞳也「魅力、だぁ?」
???「大丈夫だ。それぞれの人物に関するリストはそのテーブルに用意してある」
隆之「あ、これ……ですか」
春太「う、うわぁ……けっこう書かれてる」
瞳也「なんか気持ちわりいな……」
作者「あ、でもあんまネタバレとかすんなよ」
隆春瞳「「「おう」」」
???「そんじゃ、しばらく消えるからよ。もう一つのヒロインの会のこともあるんでね」
そしてぱっと煙のように消えていった黒いやつ。
隆之「……え、と」
春太「たしか、議題って」
瞳也「それぞれの魅力、だったよな?」
春太「これ、絶対に話し合わなくちゃいけないんですよね……」
瞳也「まあ、実際どうかは知らねえが、早く事を進めない限りここからは出られないと見るべきだろう」
隆之「それじゃあ、順番を決めましょうか」
春太「そうですね」
瞳也「まあ、無難に若い順でいいんじゃねえの」
隆之「うーん、それだと御子柴くんと俺、どっちが上なんだ?」
春太「僕、誕生日が六月です」
隆之「俺は五月……ってことは御子柴くんだな」
春太「え、僕ですか……」
瞳也「これって、つまりは俺らが御子柴の魅力を話し合うんだよな?」
隆之「たぶん、そうだと思いますけど」
瞳也「えーと、なになに? 身長は百七十二。体重は五十五。誕生日は四月一日と。そんで、ごにょごにょ……っておい、これ」
隆之「ええ──御子柴くん、本当なの?」
春太「……はは、そこまで書いてるんですか……プライバシーないですね、ほんとにあの黒いやつ」
隆之「……」
瞳也「……」
春太「ほ、ほら。もっと別のところ見ましょう」
瞳也「あ、あぁ──えっと。うん? おいオマエ」
春太「はい?」
瞳也「女ふたりもひっかけてんのか?」
春太「え、いや、え?」
瞳也「え、じゃねえよ。書いてあんぞ、『ヒロイン二人の気持ちをもてあそぶクソ野郎』だって」
春太「く、クソ野郎!? いやいや、僕は瑠璃一筋だし」
隆之「瑠璃ってどっちの瑠璃なんです?」
春太「え、それは■■瑠璃ですけど」
隆之「え?」
瞳也「なんて?」
春太「だから、■■のほうです」
隆之「なんて言ってるかわからない……」
春太「えぇ、そんなぁ」
瞳也「あ、わかったぞ」
隆之「え?」
瞳也「これがさっきの作者のいう、ネタバレなんだ」
隆春「「あー、なるほど」」
隆之「というか、魅力を話し合うんならもっと良いところを探さないと」
瞳也「ま、それもそっか」
隆之「あれ。なんか裏に書いてありますね」
瞳也「えーっと、ほほう……御子柴春太の人生、だとさ」
隆之「これ読んだら何かわかるかもしれませんね」
……一時間後
瞳也「……なんて、こった」
隆之「……本当に、それです」
春太「え、えーと。どう、でした?」
隆之「御子柴くん、どうしてくれるんだ!」
瞳也「そうだぞぅ!! おまえなぁ! 泣きたいときは泣いていいんだって!」
春太「は、はぁ……」
隆之「いろいろ我慢しすぎなんだよ、まったく! 頼ればいいじゃないか! あーでも頼れない気持ちもわからなくはないぃぃぃ!!」
春太「え、えぇ……」
瞳也「あー、もうどうしようもねえな。魅力どころか欠点、見つけちまうし」
隆之「まあ、この欠点こそが魅力なのかもしれませんよ。我慢強いって意味で」
瞳也「ふん、どこが。我慢強いってのは脆いんだよ。いつの日か、すぐに崩れ落ちるもんだ。大きなもん背負ってたら、独りでいればそのぶんリスクを恐れて、足がすくんじまう。そしていつか、壊れる」
隆之「……神山さんも、そんな経験が?」
瞳也「まあ、な。俺の場合、目が見えないときに俺の目になってくれるやつがいつもそばにいた。結局、途中までそれに気づけなかったけどよ」
隆春「「(目が見えない……何かの比喩かな)」」
瞳也「まあ、そうだな。御子柴に魅力があるんだとしたら、たぶんそれは度を越した優しさだろうさ」
春太「度を越した、優しさ?」
瞳也「おまえは、明らかに自分のほうが危ない状況にあっているのに、それでもいつも考えるのは他人のことだ。そのせいで無理しちまって、ずっこけることがあるにせよ、それは間違いなく優しさなんだろうよ」
隆之「おぉ……さすが年長者ですね……」
瞳也「年長者言うな。これでもまだ二十二だっつの」
春太「優しさ……ですか。僕、そんなこと一度も」
隆之「まあ、あまりそんなこと考えなくたっていいと思うよ」
春太「え?」
隆之「ほら、自分の良いところを考えすぎるとそれが露骨になって、その長所が発揮できなくなるだろ? だからべつに意識しなくてもいい。逆に、自分に自信がなくなったときにさ、自分の長所のことを考えてみるといいと思う」
春太「……はい、ありがとうございます」
瞳也「そんじゃ、次は真堂だな」
隆之「俺、ですか……」
作者「つづくよ」
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