第15話

 二人並び、ともに帰路につく。


 少女──咲良は、密かにこの時間を苦痛だと感じつつ、幸福だと微笑んだ。

 もうこの先、自分と彼に未来はない。

 叶うことのない、十年越しの初恋。

 何もなかった自分に桜の種を与えてくれた彼に、咲き誇る桜の花を見せる機会はもうなくなったようなもの。


 だから、せめて。


〝ホント、〟


 こうして二人で帰るときは、そういう気分でいたい。


〝うわきもの……。〟


***


 咲良ちゃんとの帰り道。


 どこかなつかしい笑顔が、頭のなかに思い浮かぶ。


 隣を見ると彼女は微笑んでいる。

 どうして笑っているのと訊くと、桜を早く見たいと思って、と彼女は言った。


 その言葉の意味は、俺はよくわからなかった。


 けど。


 そのとき、俺は思い出した。白河咲良という、初恋のひとを。


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