紅の雪花(裏編)

第1話 永井編~紅の雪花~

1、なぜ、不思議だと思うのだろう? (永井ルート)

2、まあ、そんなことはいいか。


 なぜ、不思議だと思うのだろう?

 どうして、不思議だととっさにそう思ったのか。直感に近いものだった。

 

 三十分後、俺は準備を整えて学校へ向かったが、その途中、不思議だと感じた理由ばかりを考えていた。


 そのとき、かすかに小さな記憶の断片が頭のなかによぎった。ある屋敷の花壇。同じように白黒の服を着た永井さんが、無機質じみた表情で花に水をやっているところだった。


 笑顔の多い、表情豊かな永井さんと、ただ空虚な顔で日々を過ごしている永井さん。

 同じ顔だが、それでも別人じみている。


 学校に着いたときも、ただただそのことを考えていた。俺でもびっくりした。たったこれだけのことに夢中で考えてしまうことに。


 ──本当に、なんでなんだろう。


 言葉こえが、蘇る。


〝生き続けることが、いちばんきれいなのよ〟


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