第14話 少年はツミビトを睨む。
翌日。
昨日みたいに紅子の看病をしようと部屋へ向かった。
食堂で大きな容器に氷水をいれて、タオルを拝借する。永井さんから託された薬と流し込むための水も持って、部屋へと足を運ぶ。
その途中で、またあの不吉な執事に会うことになってしまった。
「やあ、真堂隆之くん。昨日ぶりだね」
などと軽快な言葉を、右手をこちらに向けて左右に振りながら言った。
「……おはようございます」
少し気だるげに返事をした。別にこの人は俺に対して何かしたというわけではないのに、どうしてか、敵対するような態度を取ってしまう。
「おやおや、ずいぶんと元気を失くしてしまったね。ついさっきまで、楽しそうな顔をしていたというのにさ」
「そんな顔をしてましたか、俺」
「ああ、してたとも。本当に楽しそうだった」
にやりと皮肉げに笑う男。
少し俺はイラついて、その男の横を通り過ぎようとしたとき。
「気を付けたほうがいい」
「はい?」
「君が見ているのは全て外皮だ。あれはね、皮をむけば正真正銘の化け物になる。今ならまだ間に合う。何もなかったことにしておうちに帰ったほうがいいぞ」
俺はその言葉を聞いて、後ろを振り返った。その男は背中を見せ、両手をポケットに入れている。そして男は俺に目を向ける。その目はまるで俺を哀れむような目をしていた。
「紅子について、何か知ってるんですか」
「……僕が知っているのはあくまで一つの側面だ。君が知っているのも、あくまで一つの側面だ。そして、そうだね……きっかけが歪んでしまえば、色々な側面を見せることになる。明確な意思を持って君を殺しに来ることだってあるぞ」
俺には、その言葉の本質を理解することはできなかった。それを理解するにはもっと他に色々な経験が必要だと思ったし、そのためには色々な人生を生きる必要がある、と思った。
俺はふん、と鼻を鳴らしてその男に背を向けた。それから、俺は歩き出す。男が去っていく気配はしなかった。
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