私を形造った三つの個人CGサイト
もしこれらの個人サイトをご存じの方はご一報ください。
九品仏大志並みに同志認定いたします。
1.Paco's ROOM(管理人 Pacoさん)
2.しるぅwind(管理人
3.Pink Revolution(管理人名失念……)
この方々はみなプロではなく素人絵師です。
当時同人なんて単語は一般的ではないし、即売会なんて存在も知りません。
私はこみっくパーティーというゲーム(の深夜アニメ)により、初めてその存在を知ったぐらいです。
もしかしたら同人という概念をそこで知ったのでインターネットで調べてみようと考えたのかもしれませんが、順序としてどちらが先かまでは覚えていません。
世の中に出回っているCGイラストというのはプロが描いたものだけだと思っていたので、ただの大学生みたいな人がプロ並みの作品を作り、それを無料で公開してることへの衝撃を受けたのです。
カクヨムでも「これ無料で読めていいの?」なんて作品がありますが、それ以上の衝撃です。
CGって一般人が描けるの!? って感じでした。
基本は二次創作イラスト、たまにオリジナルキャラが描かれていました。
オリキャラ、今風に言うと「うちの子」ですね。
原田たけひとさんのプレネールさんみたいなもん。
知らないって?
覚えている限りで特徴を述べると、
1.Paco's ROOMは多分Yahoo!ジオシティーズ。
デ・ジ・キャラットのでじこやぷちこを描いてたロリ系絵師。
2.しるぅwindは覚えてないけどどこかのレンタルサーバー。
Paco's ROOMのリンク経由で辿り着いた気がする。
デ・ジ・キャラットのうさことかぷよぷよのアルル描いてた。
後期はサイト名を「だぁくwind」にしてた。
絵柄も含めて一番好き。管理人名覚えてる時点でわかると思うけど。
3.Pink Revolutionは独自ドメインかどこかの短いレンタルサーバー。
比較的オリキャラが多かった。
サイトには一般絵しかなかったが、多分コミケにも出しててそこでは成人向け同人誌作ってたと思う。
C60とかサンクリとか、即売会系の謎単語が多かった。
これまでも述べたとおり、個人サイトの全盛期は2000年代前半くらいまでです。
後半からはブログが主流で、イラストサイトもPixivが2007年にサービスを開始、ニコニコ動画も同じく2007年からサービスを開始しています。
現在も続いている、企業の巨大なプラットフォーム下で個人がわちゃわちゃと自由に創作を始める時代です。
htmlほどの専門的な知識は必要なく、用意された形式の中で誰でも簡単に自分を表現できるようになった時代、特権階級のものではなく、一般向けに開かれた世界へとネットの世界も変容しつつありました。
ネット黎明期を混沌と呼ぶなら、2000年代は無法地帯と言えます。
カクヨムのような二次創作のガイドラインなど存在しない、あっても形骸化、そもそも無視が当たり前。
クソコラにアニメの切り貼りMAD動画、改造ゲーム……利用者は楽しかったでしょうが、企業はたまったもんじゃなかったはず。
隠れてこっそりと当事者たちだけで楽しむもの、だったものが大多数の流入により白日の下に晒されてしまい、商売の道具として利用する者も現れ法整備する必要が出てきたのです。
ニコニコ動画やYou Tubeのゲーム実況なんてまさにそれですね。
他人の成果物を利用して収益を得ているのはおかしい、と。
結果、ゲーム実況OKな商品とNGのものが生まれてしまう。
ところで2000年代前半、そんなニコニコ動画やYou Tubeの前身となったものにFLASH動画があります。
いわばGIFアニメと動画ファイルの中間的存在で、特徴としてはHTMLに埋め込めてウェブ上で気軽に利用でき、さらに音声付きで容量も軽く扱いやすかったのです。
「おもしろフラッシュ倉庫」で検索したら今もYou Tubeの動画が出てきます。
……なぜYou Tube?
インターネット上のFLASH動画(.swfファイル)を再生するにはAdobe Flash Playerが必要ですが、Adobe Flash Playerは2020年末にサービスを停止しているので、現在は再生出来ません。
パソコンは問題ない。
ファイルも壊れてない。
ネットにも接続している。
でも再生できない。
そこにあるのに、ないのと同じ。
さっきはYou Tubeにあると言ったじゃないか?
ええ、言いました。
You Tubeの動画が出てきます、と。
You Tubeにあるのは.swf形式でなく.mp4形式の動画ファイルです。
それは何も知らない人が見たら同じようなものだと思うかもしれません。
でも、その当時を知る人には全く別物なのです。
テセウスの船の話と同じです。
動画の中身は同じで、映像も音声も再生時間も同一のものです。
ただし、それを構成するファイル形式、アップロード先といったものは全て別形式に置き換わっているものを同一だと言えるのでしょうか。
嗚呼FLASH動画は面白いな、と言っていいのでしょうか。
これは電子ファイルの唯一性以前の話です。
かつての「おもしろフラッシュ倉庫」というサイトは、そこにあった無数のFLASH動画はインターネットの海から消えてしまったのです。
これはウェブ上のサービスが消えてしまったという話ですが、そもそもウェブサイトそのものが消えることだって珍しくありません。
個人は無料のレンタルサーバーを利用していると書きましたが、そのレンタルサーバーのサービス自体が終了することで、大量の個人サイトがネットの海から切り離されていきました。
・2010年8月25日にinfoseek iswebがサービス終了
・2016年11月10日にniftyがサービス終了
・2019年3月31日にYahoo!ジオシティーズがサービス終了
更新が途絶えつつも残り続けてきた古参のホームページは次々と消えていきました。
Yahoo!ジオシティーズのPaco's ROOMはもちろん、しるぅwindも、Pink Revolutionも現存していません。
私の思い出の個人サイトは消えてしまったのです。
例えばウェブアーカイヴを漁ってどこかの時点で保存されているかもしれない「しるぅwind」を見つけ出したとしても、それは過去の記録です。
運が良ければ掲載されていたCGも見られるやもしれませんが、果たして「しるぅwindは続いている」と呼べるでしょうか。
同じ出来事でも本で読むのと実際に体験したのとでは印象が違うように、まるで教科書越しに見ている「歴史」そのものになってしまったと感じるのではないでしょうか。
あの時の空気感、キリ番を踏もうと頑張ったり、更新があるかどうか心待ちにするドキドキ感はそこには残されていません。
まだサイトの跡地があるなら思い出も色褪せないでしょう。
しかしサイトそのものの消滅は思い出を懐かしむ余韻すら与えないのです。
その時点で「歴史」に置き換わってしまう。
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