知識層と貴族の特権階級による社交場
さて皆様は「侍魂」というテキストサイトをご存知でしょうか。
先行者を世に知らしめた偉大な個人サイトです。
え、知らない?
そもそもテキストサイトって何?
先行者って何の名前?
ハァ?
有名なネットスラングですが、これ今では通用しないんですってね。
2000年代後半から2010年代前半のスマホが普及するくらいまででしょうか。
この単語、いつ頃生まれたんでしょうか。
それこそ
「むしろ死語です」
それはわかってるっての。
2016年のヤフー知恵袋によると、2007年にはすでに存在しているようです。
そこで紹介されているリンク先を見ると……
「お探しのページは、公開期間が終了しました。」
>日経トレンディネットは、2019年6月末をもちまして記事の提供を終了し――
まあいいや。
それ以前に、昔はGoogleなんてなかったんですよ。
上記の侍魂というサイトで紹介されて初めて知った方も多いのではないでしょうか。
少なくとも、私にとってはそれが真実です。
恐らく2001年の秋から2002年冬くらいのどこかだったかと。
そもそもGoogleっていつからあるの? という疑問にはお答えできます。
1998年です。
じゃあ2000年くらいには既に知られていたのでは? というとそんなことはなく、日本語版Googleが出来たのが2000年です。
情報が広まる速度も今と昔では全然違いますね。
インターネットのトップページは国内では(今もかもしれないけど)Yahoo! JAPANが主流でした。
他には細々とgoo、Infoseek、Excite、MSNなど……ですがYahoo! JAPAN以外は邪道レベルです。
ブラウザもIEがほぼ独占状態だったので初期状態のまま、という方も多いでしょう。
当時は検索サイト(というか検索エンジン)が複数あって性能にもバラツキがあり、検索結果の精度が今とは違う意味で低かったです。
今はしょうもないサイトが乱立して必要な情報に辿り着けない、真偽を確かめられないという感じですが、昔は検索結果に対して十分なサイトが存在していないので、関連性の低い情報でもお構いなしに表示したり、検索結果自体が少ないという感じ。
なのでGoogle台頭後もYahoo! JAPANの検索の方が欲しい情報が得られる(決して情報の質が良いとは感じませんでしたが……)、という考えであえて使わない人はいました。
個人で好みの検索エンジンがあり、その結果辿り着いた特定のサイトをお気に入りに入れ閲覧する、というのが一連の流れ。
……今もあまり変わらない?
そうかもしれません。
あえて違いを上げれば再現性の差というか。
昨日検索上位にあったはずのサイトがもう見つからないなんてことがしばしば。
ウェブサイトの母数は昔の方が圧倒的に少ないのに、です。
今でも毎日Twitterやインスタに出没する人は多いでしょうが、昔は今とは比べ物にならないほど縄張り意識が高いです。
それは自分が幼かったからかもしれませんが、子どもにとって学校が世界のすべてであるように、特定のサイトがインターネットの全て、という考えは強かったです。
その最たるものは2ちゃんねるですね。
これも死語かな。
例えば活動はカクヨムオンリーの人もいるでしょう。
その人たちは「小説家になろう」や「エブリスタ」といった他の小説投稿サイトの存在すら知らない、なんてことはないはず。
多くの選択肢の中からカクヨムを選んだ、ということです。
でも昔はそうではない。
検索しても出てこない、情報の真偽もわからぬアドレスを直打ちしてやっとのことで辿り着いた、自分にとっては秘密の場所。
リアルとネットが切り離されていた時代に見つけた桃源郷。
そりゃあ入り浸りますよね。
居心地が良ければ「他のサイトを探そう」なんて思わないですよね。
そもそもあっても見つからないんだから。
カクヨムという軒先を借りして執筆する、という形式はブログと同じようなものですが、ブログですら2000年代後半の流行りです。
それ以前は創作活動は個人サイトで行うのが主流でした。
なろうですら2004年に個人サイトとして誕生、知名度が上がったのが2010年頃の話です。
つまりネットにおける情報の行き着く先は個人サイトだったわけです。
今だと、
・検索サイト→カクヨム→ユーザーの小説
で読みたい小説を探せます。
これならカクヨム内部で完結しますが、昔は
・検索サイト→小説検索サイト→個人サイトの小説
となり、当時ならカクヨムが二次的な検索エンジンの役割を果たしていました。
ユーザーページが外部の個人サイトそのものだったわけです。
これは逆を言えば、個人が小説をネットに公開するならhtmlやファイル転送のFTPの知識が必要で、公開するにはinfoseekやYahoo!ジオシティーズ、fc2のような無料ホームページスペース(いわゆるレンタルサーバー)か、5000円ほど支払いドメインを取得する必要がありました。
さらにネットも使い放題ではなく電話回線による従量制だったので、ネットに繋ぐと家の電話は使えないわ電話料金は増えまくるわで金額的な負担は今と全然違います。
だからインターネットはそれなりの知識と金銭的余裕のある選ばれし者の世界、ある種の特権階級によるサロンみたいなものでした。
つまり見る側にも作る側にも相応の知識があり、例えば改善案などを送れば反映される速度も早かったのです。
カクヨムのようなプラットフォームでは、例えば挿絵の挿入なんて明日に実装なんてことは出来ません。
それをやりたきゃ個人サイトでやれ、って話。
ただし「カクヨム」の庇護を離れてアクセス数なんて期待できないでしょうが。
……自営業で個人商店にするかコンビニにするか、みたいな話ですね。
ようやく個人の話です。
当時の自分はインターネットで何が出来るかよくわかりませんでした。
最初の感覚としては雑誌の延長みたいな感じ。
色んな情報がごちゃごちゃとしていて、欲しい物を拾い上げる、と。
そこで漫画家になりたかった私は絵の描き方を探すことにしました。
今ならTwitterやPixivで簡単に神絵師は見つかります、良い時代。
昔はそもそも宣伝する場所がないのです。
すぐに検索エンジンが拾ってくれるわけでもなく、まとめサイトのようなものもなく、せいぜい登録しているCG検索サイトに更新したことを知らせる程度。
ここでいうCG検索というのはあくまで個人サイトへのリンクを意味します。
つまりCG検索サイト(のリンク)が唯一の導線に等しい。
これはカクヨムで良作品をスコップする作業と同じです。
この人は自分が発掘したんだ、と特別視したい気持ちはわかるでしょう。
当時使用したのは「TINAMI」というCG検索サイトです。
昔はPixivのように直接イラストを投稿できるようなサイトは皆無です。
画像掲示板やお絵かき掲示板くらい。
……下手したらその文化すら今の人は知らないか。
そこで出会った三つの個人CGサイトが私のインターネット史における原点です。
といっても実際は「侍魂」、「みんなきてKOIKOI」、「ろじっくぱらだいす」などのテキストサイトの方が大きく影響を受けました。
ただ黎明期にインターネットってすごいところだ、と思わせてくれたという意味で私を形造ったとも言える個人CGサイトを紹介しようと想います。
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