第二章 e-Sports編
プロローグ
35話 私は戦場の虜すぎる
――たった一夜にして、私はその世界の虜になった。
キックもパンチも刃物もなんでも御座れ。
そんなアウトローが
警察も法律の目も届かない、この世のどこでもない仮想の空間で、画面の中だけの箱庭。
綺麗な鳥籠の中で育てられてきた私にとって、そこはどこまでも羽ばたいていけそうなくらい広大な世界だった。
だけど、ここは決して優しい世界じゃない。
讃えられるのは勝者だけ。
強者に至る過程なんて誰の目にも留まらない。
名誉も名声も勝者だけが得られる大原則は、
現実世界でさんざん競争を強いられているのに、なんでわざわざ逃避先でも競争するの?
世界の外側にいる人たちは、そんな風に不思議に思っているんだろう。
何を隠そう、私もそう思っていたのだから。
けれど、実際に身を投じてみれば分かる。
ここは平等を謳う現実世界より、もっとずっと公平で自由な戦場だ。
私も他の誰も、等しく有象無象の
無名でひよっ子で誰の目にも留まらないただの
だから、誰からの期待も失望もかけられない。
何のために努力するのか。
どうやって強くなるのか。
どこに向かって鍛錬するのか。
全部、ぜんぶ、自分で決められる。
そんな自由に私はずっと焦がれていて。
その自由を得た私は、初めて「夢中」の意味を知った。
ここは私が夢中になれる世界。
だけど、私がここへ来るには密入国を重ねるしかない。
だから明日も、私は
だってそれが、密入国の偽造パスポートを持ち続けるための唯一の方法だから。
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