第2話 同居人

それから数か月が過ぎ、学校にも慣れた夏休み目前に迫った頃、私はバイト尽くしの日々を送ろうと考えていた矢先、親から一本の電話が……



「痲由佳、夏休みから父さんの友人で仕事仲間の子供をお前と同居させようと思っているんだが…どうやら9月からお前の学校に編入するらしい」


と、父親から連絡があった。




「同居?分かった」

「じゃあ伝えておくから頼んだぞ!」

「うん、OK!」




電話を切る私。




「とは言ったものの…これじゃ部屋に入れられないよね……?超散らかってるし!」




私は学校行って、バイト行っての日々を送っている為、勿論、週末や休日なんて特に働き時だ。


ここには寝に帰っているようなものだ。


偶々、バイト休みや学校休みの時はグータラ生活。


そんな、いま(現在)の部屋は足の踏み場もない程に近いくらい足元は散乱していた。




「………………」




余りの酷さに自分が情けない。


それから片付けなきゃと思いつつも一日一日が過ぎていく。




そして夏休み入った午後の時間。


バイト行く迄の時間、片付けようとした時だった。





ピンポーン……


部屋のインターホンが鳴り響く。



「誰だろう…?」



玄関先に向かおうとした、その時。




ゴロッ ズルッ ドサーーッ


足元の何かを踏み、バランスを崩してしまい床へ派手に転んでしまった。



「いったぁぁぁ〜っ!」



と、叫ぶ中、今一度、インターホンが鳴った。



私は、痛めた所をさすりながら、玄関先に向かう。




「はい?」



ドアを開けると一人の男の子が。


私と変わらない年齢だろうか?




「あのー……どちら様でしょうか?」

「君、邑城 痲由佳さんだよね?」

「はい」

「俺の事、聞いてない?君の父親の友人の息子で吉原 優哉(よしはら ゆうや)って言うんだけど……」


「えっ!?……ええーーっ!!男の子だったのーーっ!?」

「えっ?何?その反応って女の子と思ってた感じ?」




私は何度も無言で縦に頷く。





「つーか性別、お父さん教えてくれなかったから!自分の友人であり仕事の仲間の子供がってだけ聞いていただけだったし!」


「そうなんだ。残念だけど男の子なんで宜しくーーっ!」



と、部屋に入って行き始める。




「待って!!」


グイッと男の子を引き止める。




「うわっ!」




ガンッとドアに背中が押し付けられるような状況になる。


まさに壁ドンならぬ、ドアドン状態。




「急に掴むなよっ!危ねーだろっ!?」

「ご、ごめん…」



ドキーーッ



男の子の顔が至近距離にあり、心臓が飛び出る勢いで私の胸が大きく跳ねた。




かあああああ〜っと身体中から汗が吹き出る勢いで熱くなったのが分かった。




「………………」



そんな中、男の子は私から、スッと離れ部屋の奥に入って行き始める。



「駄目ーーーっ!マジヤバイからーーっ!」




ゴトッ


男の子は自分の持っていた荷物を落とす。


ドサッ


そんな私は再び何かに躓(つまづ)き転倒。




「ったぁぁ〜っ!」


「てめぇ…女だよな?」


「う、うん…正真正銘女の子で、勿論汚れていないピュアな女の子で…いやいや…そんな事はどうでも良くて」



「………………」



「ごめんっ!本当、すぐに片付けるから!だから街に出掛けて時間潰し……」


「慣れない街に一人で行けるわけねーだろっ!?」




私の言葉を遮るように男の子は言った。



「………………」



「俺の部屋はっ!?」


「えっ?あっ、向こうの奥…でも…」


「あー、お前の事だし、どうせ何も出来てねーんだろうな〜?邑城 痲由佳っ!お前は、ゴミ袋を用意して分別しろっ!」


「あ、うん…」



そして私達は、片付けを始める。





「…ごめん…ゆっくり出来なくて…」


「別に!充分分かったよ!お前は整理整頓の出来ねー女っつーのがなっ!これじゃ、男一人所か一生独身だろうなっ!」


「べ、別に良いしっ!キャリアウーマンになれば良い事だしっ!」


「いやいや、キャリアウーマンなら尚更、女子力ねーならヤベーだろっ!?男と変わんなくね?そこは、仕事出来て女子力あるギャップあった方が良いに決まってんじゃん!お前には絶っ対に無理じゃね?」


「勝手に決めつけんの辞めてくれる?」


「いやいや、決めつけるも何も、これじゃ到底無理!」




「ああっ!ヤバっ!もうこんな時間!バイト行かなきゃ遅刻……」


「は?バイトだぁ!?待てっ!学校バイト禁止だろっ!?」


「うん…無断バイト…」


「はあぁぁぁっ!?お前マジで言ってんの!?」


「…うん」



「………………」




吉原君は、ゴミ袋を取り上げる。




「あっ!」


「行けよ!」


「えっ!?でも…」


「バイトなんだろう?無断欠勤する気か?それとも仮病でも使うのかよ!」


「でも…」




ゴミ袋を下に置く吉原君。


振り返らせ、私の部屋に体を向けさせた。




「迷惑かかる事くらいわかるだろう?しかも健康のくせに!こっちは俺が出来る限りの範囲で片付けておくから行きな!」


「…ごめん…ありがとう…」




私は申し訳なく後ろ髪引かれながらバイトに行く事にした。




「もしかして…アイツ…忙しい奴なのか?……まあ、この状況見れば分かるけど…多分…整理整頓も苦手そうだよな…」

























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