第8話 暴かれた陰謀
数日前
見渡す限り女子だらけの、おしゃれなカフェに二人はいた。
夏木『三人について調べたわ。滝沢、高中は優秀な営業マン。鹿島社長とはランディア立ち上げからの仲、かなり信頼を置いているそうよ。』
夏木は三人の詳細を狩野に伝える。
狩野『なるほどね。ならこの2人を抑えておけば万が一は起こらないわね。』
夏木『ちなみに藤木…彼は地方の営業所の営業マン。営業成績はそこそこだけれど社長との繋がりはなし。本社の手伝いをするのには確かに妥当な人物ね。』
夏木は自分の見解も含め、狩野に的確に説明する。
狩野『やはり高中と滝沢ね。二人の動向から目を離さないで。』
夏木『わかった。プレゼン資料が出来次第すぐに渡すわ。』
夏木のリークによって、ランディアの動きは狩野に筒抜けとなった。
…………
シノシノラバー秘書室で、内山が狩野に詰め寄る。
内山『納得がいきません。どうしてプレゼンの資料を私に作らせていただけないのですか。』
内山は今まで自分の仕事は自分で成し遂げてきた。
他人が作った資料をもとにプレゼンを行うことはプライドが許さなかった。
狩野『あなたには申し訳ないけれどこれは会社の重要案件。あなたは優秀だけれど、いち営業マンに資料を作らせる案件ではないの。』
内山『だからって……ならばなぜ私がプレゼンを行うのですか。誰でも良いのでは…』
狩野『会社の代表がプレゼンを行うことになっているの。あなたの知名度や能力なら申し分ないでしょう。』
内山『でも…………。』
狩野に軽くかわされた内山は、仕方なく資料を確認した。
内山『前日に資料を渡してきて全て覚えろだなんて、何が起きているの?それにしてもこの資料、すごくよく出来ている…。』
プレゼン当日。
内山は完璧なプレゼンを行った。
しかし、ランディアのプレゼンを見た内山には、疑念が生まれていた。
何が起きているのか。
内山には真実がわからなかった。
そして今。
藤木は持ってきた資料を鹿島に渡そうとしている。
藤木『社長、間に合いましたよ。例の書類です。』
佐川は藤木が鹿島に渡そうとした茶封筒を手に取り、中身を取り出した。
佐川『特許庁発行…??』
書類の内容を見て、佐川は驚いた。
藤木『そのとおり、この茶封筒には特許証が入っています。』
藤木は全員に見えるよう、特許章をプロジェクターに映しだした。
………………
この発明は、特許するものと確定し、特許原簿に登録されたことを証する
………………
鹿島『間に合ってよかった。藤木、ごくろう。』
鹿島は安堵した表情で藤木に向かってひとつ頷いた。
藤木『ありがとうございます。では私はこれで。』
藤木は何事もなかったかのように表情を変えず会議室から退室した。
青ざめる佐川。そして狩野と夏木。
ここで沈黙していた鹿島が口を開く。
鹿島『ご存知の通り、ここにある特許証は、申請から発行まで最短でも一年はかかる代物だ。狩野さん、あなたは次世代タイヤ構想について半年前から構想を立てていたと話しましたね?この特許証は、これがうちの発明であるとともに、一年以上前から構想していたものであるという証拠に他ならない。』
鹿島はこれ以上ない証拠を武器に、攻勢に転じた。
篠山『そうなの?』
佐川『だが、このプレゼンはどう説明する?!』
佐川は苦し紛れの言い訳に唇をかみしめた。
狩野『そうです。このプレゼンの内容を見れば一目瞭然…内山が苦労して作ったプレゼンの内容は…内山、なんとか言いなさい!』
内山『………株式会社ランディア様。恐れながら、このプレゼン内容は私が作成したものではございません。』
内山は数秒の葛藤ののち、真実を打ち明けた。
狩野『内山!!!!!!』
狩野は叫び声に近い声を上げた。
内山『私もおかしいと思っていました。どうしても私にプレゼンの資料を作成させてもらえなかったものですから。これは秘書である狩野から渡されたUSBメモリです。この中にはプレゼンのデータが入っています。』
鹿島『夏木が持ち出したものと同じUSBメモリだな。どうなんだ夏木。』
夏木『…………』
夏木は明かされた自らの企てに動揺し、言葉を失っていた。
佐川『もういい!茶番は終わりだ!』
勢い良く会議室から出た佐川は、社員たちに睨みつけるような目をむけられた。
佐川『なんだお前ら!仕事はどうした!』
異様な光景にたじろぐ佐川。
栗林『全社員に通達しておいたんですよ。このプレゼンは社内のネットワークで閲覧できるから見るようにとね。』
佐川『な、なんだと…』
佐川の動揺は震えに変わっていた。
栗林『社員達に決めてもらおうと思っていました。プレゼンの内容を見てどちらを信用するかをね。まさかこんな結果になるとは思いませんでしたけど。』
栗林はこの案件を、社員全員で決めようと思っていたのだ。
社員思いの栗林らしい方法である。
佐川『お、俺は何もしていないぞ……シノシノラバーに騙されたんだ!』
狩野『何を言っているの!?自分だけ逃げようだなんて情けない!栗林さん、これが私と佐川さんのやりとりが残っているタブレットです。あとは煮るなり焼くなり好きにしてください。』
佐川『きさまあああああああ!!!』
佐川は自分の敗北を受け入れることができず叫び声をあげた。
佐川が退室した会議室で、栗林繊維の全社員が聞く中、鹿島が話し始めた。
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