第16話 外堀町(3)
「怒んねえの?」
「何が?」
農作民が住まう区画を東に逸れ、宿屋が集まる区画まで移動していた。
先頭を歩く
「さっきのだよ。
「別に?怒る気力もないし
月白が手をひらひらと振ってみせる。
「自分と違うものを蹴落とすことでしか
珊瑚は月白の言葉を聞いて新鮮な気持ちになった。心に気持ちのいい風が吹き込んできたような気がする。物憂げそうな表情をしていた
「国、周りの人間がどんな状況であろうとも己のことは己で認める。他の者の存在については見上げることも見下げることもしなくていい。同じ目線で話す。それだけでいいんだ」
「……あんたって教えを導く奴みたいだな。村に時々来る……なんだっけ?」
先ほどまでの不愉快な気持ちがどこかへ吹き飛ぶ。顔を上げて歩きながら考え込んだ。
「
その返答を聞いて珊瑚は楽しそうに笑った。
「泊まる場所だが……。珊瑚、心当たりはあるか?」
「そうだな……。宿は下級だと汚いし治安も悪い。上等なところへ行こう。あんたも一応王なんだし」
珊瑚の失礼な発言を非難するように灰青の鉄拳が珊瑚の頭上に落ちた。珊瑚の「いってええ!」という声が辺りに木霊する。周囲の人達の視線が月白達に集まった。
「……お前だけ野宿させるぞ」
灰青のどす黒い声を聞くと月白は吹きだすようにして笑った。
「本当に仲がいいな!珊瑚、頭の骨は大丈夫か?灰青は馬鹿力だからな」
「これが仲良しなわけないだろ!頭が割れるかと思ったぞ!どうしてくれんだよこれ以上馬鹿になったら」
頭を抑え込み、涙目になりながら珊瑚が灰青を忌々し気に睨み上げる。なんとか拳を振り上げて闇雲に灰青に反撃しようと試みるがその拳が灰青に当たることはなかった。その様子を見てまた月白が腹を抱えて笑う。
「ほら。そんなことより早く宿を探すぞ。このままだと本当に皆で野宿になるから」
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