赤ノ国
第14話 外堀町(1)
赤ノ国にやって来て三日目の昼過ぎ。三人は身支度を整えていた。
「……本当に行くのですか?」
「ああ。行くさ」
乗り気ではない
朝方に赤ノ城から
「罠である可能性は?」
「ない。赤ノ王が
笠を被り直しながら迷いのない返答をする主人に灰青は胸の奥が
「……分かりました。赤ノ王から許可が出たのです。これから旅の安全は保障されるでしょう」
「すげえな。運まで味方につけるなんて。やっぱあんたに付いてきて正解だった!」
振り絞るような声の灰青とは裏腹に
「世話になった」
関所に詰める人々に挨拶を交わすと月白達はやっと赤ノ国へ足を踏み入れることができた。厩に預けていた二頭の馬もゆっくりと休めたようで快適な走りをみせた。珊瑚が荷物持ちをしていたので歩調は人の歩く速さと同じぐらいだ。
「全く。関所ってのは厄介だよなあ。人の流れを止める。それに思考も」
「普通の国にはあって当然です。それこそ間者を防ぐために。白ノ国は開け過ぎなのです……」
隣で馬を歩かせていた灰青が月白を
「一国ぐらいそんな国があったっていいだろー。自由を謳歌する国がさ」
「そもそも!月白様には王の自覚がなさすぎるのです。威厳と言うものがまるでない。民と距離が近い故に舐められるし命も狙われやすくなる。さっきだって関所の者に声を掛けなくとも……」
「あー!もう!出発したばかりなのに小言は止めてくれ!」
月白が馬の上で背中を仰け反らせた。月白の乗っていた白馬が驚いたように頭を振る。
「盛り上がってるとこ悪いけど。そろそろ
騒ぎ立てる月白と灰青を冷めた目で見た珊瑚が指をさす。
「ああ。
外堀町はその名の通り、赤城の外堀に出来た町だ。碁盤の目状に規則正しく区切られた町並みが四方に広がっている。所々に用水路を兼ねた堀が見られる。戦が起きた事を想定して街並みが造られているのだ。
関所を越えてから人通りが多くみられる。旅人や他国の商人らしき人物たちは誰もが頭上の笠を深く被っていた。沿道の
赤ノ国の王が住まう赤城内へは更に二日間を要する。外堀町を出た後に
月白は笠を被り直し目の前の巨大な朱色の門の前に立った。
「久しぶりだ……。この人の多さも。この息苦しさも」
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