第4話見えないもの

 僕が人の「思い出」が見えるということをようやく理解してくれた瀧川さんはそれについて詳しく聞きはじめた。

「その『思い出』ってやつが見え始めたのはいつだ?」

「中1です。」

「誰の思い出も見ることができるのか?」

「たまに見えない人がいます。」

「健が死んだ日、健の『思い出』は見えた?」

「見えませんでした。」

「そっか、じゃあそれが見えなかったことが何かしら関係してるかもしれないな。」

「そうなんだよ。でもそれがどう関係しているのか全く分からないんだ。」

「最近ニュースであってる変な死に方をするやつとは関係ねーかな?」

珍しく冴えたことを言った彼女は自分がどれほどすごいことに気が付いたか気付いていない。

「確かに、関係あるかもしれない!」

「なんだよいきなりでかい声出しやがって、ビビったじゃねえか。」

「ごめん。でもほんとに関係あるかもしれないんだ。『思い出』は亡くなった人から最も強く出てきていてそれが死後まもなくならなおさら。ニュースとかで現場とかが映った時もそれだけで気を失いそうになるくらい『思い出』があふれてる。」

「だからなんでそれが関係する理由になるんだよ。」

「健が死んだときはその場所から『思い出』があふれ出てなかったんだ。そして不審死のニュースで見た現場からも感じなかった。」

「つまり『思い出』が見えなかったやつは死ぬってことか?」

「だとしたら。」

僕は瀧川さんの方を見た。

「なんだよ。」

いや、まさかな…

「あ、ていうかさ、どうして瀧川さんはこんな暑いのにいつも長袖着てるの?」

その瞬間、瀧川さんの顔が少しだけ曇った気がしたが、すぐに

「日焼け防止のためだ!文句あっか!?」

と言われたので気にするのはやめることにした。しかしこのとき、もっとしつこく聞いておくべきだったと後で後悔することになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る