第3話友達
僕はあれから一か月もの間、学校を休んだ。友達を失った悲しみと、どこからかあふれ出る罪悪感に気分は平常を保っていられなかった。僕のせいなのか。あの時追わなかったら死ななかったのか。そんな言葉ばかりが脳内を反芻する。すると部屋の中に鐘の音が響き割ったた。インターホンだ。誰が来たんだろう。まだ誰にも会いたくないのに。しかし出ないわけにもいかないので気力を出して立ち上がり出ると、強引にドアが開けられ室内にだれか入ってきた。瀧川向日葵だった。
「ど、どうしたの?」
「そっちこそこんなとこで何してんだよ。まさか健が死んだのが自分のせいなんか思って閉じこもってんじゃねえだろうなあ。」
「君には関係ないことだろ。まずなんで君がここを知ってるんだよ。」
「センセーに聞いてわざわざ来てやったのになんだよその態度。舐めてんのか。」
「ご、ごめん。ありがとう。でも。」
「でもじゃねえ。お前が元気出して学校行くまで、私は出ていかないからな。」
どうしてこんな僕を瀧川さんが心配してくれるのかわからなかった。そんな浮かない表情の僕を見て察したのか
「礼だよ、この前の。」
「この前?」
「ほら、私がめそめそしてる時来てくれたろ?まああん時は怪我して痛かっただけだけど。私、友達は多いように見えるかもしれないけど困ったとき助けてくれるような友達いなかったから嬉しかったんだよ。」
「そうだったんだ。え、いなかったってどういうこと?」
「ああもううるせえなあ。だからお前と友達になるって言ってやってんだよ。いちいち言わせんな、バカ。」
僕は動揺して多分数えきれないほどありがとうを言った気がする。
「そんでなんで吉川が自分の事責めてたのか教えろよ。」
僕はこれまで「思い出」が見えることを誰かに話したことがない。だから健に「思い出」が見えなかったことが最初の理由だとは言いにくかったけど瀧川さんを信じて言ってみることにした。僕がそれを打ち明けると最初はぽかんとした顔をして、次に馬鹿にしたような顔をして、やっと本気の顔になった。
「でもよ、いったんその話は置くとして、責める理由にはならないだろ。」
「まあそうなんだけど。そんなことはめったになくて、それで心配で追いかけてたら健も走り出して結局ああなっちゃたから。僕のせいなんだ。」
「それは違えよ。どっちみち他の誰も止めらんなかったんだ。健もあいつが覚悟を決めて飛び込んだんだ。吉川のせいじゃねえ!」
「ありがとう。でも。」
ビシッ!僕はビンタされた。そして抱きしめられた。自然と涙が出ていた。
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