第2話瀧川向日葵

 一人暮らしの僕は学校に行く前いつもギリギリまで寝るのが習慣なのだが昨夜はよく眠れず、そのせいで珍しく早起きをしてしまった。特にすることがなかったのでテレビをつけてみた。全然興味のないニュースが淡々と流れている。さえない表情で眺めていると、ここ最近不審な死が多発しているという報道があった。亡くなった人達には今のところ共通点は見つからず捜査は難航しているようだった。そんなこんなでテレビを見ているとつい見入ってしまったのか結構ギリギリの時間になっていたので急いで準備をして家を飛び出した。それなりに急いで学校に行っていると、僕の少し先を瀧川さんが走っていた。追い抜くのもなんだか気まずかったのでいい距離を保ちながら走っていると彼女が急に止まり振り向いた。僕は知らないふりをして通り過ぎようとすると、

「おはよう、吉川。」

と僕の最大声量よりも大きな声で言ってきた。

「お、おはようございます。」

「なんで敬語なんだよ。まあいいや。それより私の荷物持ってくんない?」

険しい顔から急に女の子みたいな顔でお願いしてきた。まあそもそも女の子なんだけども。断るとまた面倒なことになりそうだったので了承した。

「あんがと。結構優しいじゃん。」

と今まで僕にしたことがないような笑顔を向けられ少しドキッとした。

「そいやさ、あのニュース見た?あの変な死に方してるやつ。こえーよな、ああ言うの。」

なんだ僕なんかよりちゃんと世間に目を向けてるじゃないか。僕はなんだか勘違いをしていたのかもしれない。意外とちゃんとしてる人なのかもしれない。そう思い少し気が楽になった。

「何無視してんだよこら。」

そう言って叩かれた。なぜか僕は笑っていた。

「気持ちわり、なんだよお前。」

そういうと彼女も笑い出した。今日はいい日になりそうだと思った。そんな日の帰り道、一日は最悪なものになった。

 その日、いつも楽しい「思い出」が浮かんでいる健は元気がなかった。もっと言うと健の「思い出」が見えなかった。なんとなく話しかけにくくて特に関わることなく学校が終わった。僕はまだ浮かれた気持ちで門から足を弾ませて出た。すると前の方に健の姿が見えた。あれ、今日は部活のはずじゃ。そう思い、声をかけようと走っていくと健も走り出した。僕は負けじと追いかけると健は目の前の歩道橋を一気に駆け上がり、全力で飛び降りて死んだ。僕は何が起こったのか一瞬わからなかったが周りの人の悲鳴で気を取り戻した。

「健?おい健!」

僕は今までに出したことのない声量で叫んだ。しばらくしてサイレンの音が響き渡り健は遺体として運ばれた。僕は逃げた。怖くて逃げた。何もわからなかった。

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