第17話 異国での生活にも慣れ、登校初日にいきなり名前を呼ばれる

("住めば都"ってことわざ考えた人、天才だよなぁ……)


 自動運転バスの座席から窓の外を見渡しながら、僕は呑気にあくびをしている。

 初めての海外生活。まさかの女子寮暮らし。


 強烈なキャラクターの女の子たちに囲まれて、一時はどうなることかと気を揉んでいたけど、こうして無事に登校初日を迎えることが出来たのだから――。


 不安だらけの新生活だったけど、慣れてしまえば思いのほかすんなりと受け入れることが出来た。


 まぁ寮ではあいかわらずレウィシアさんやユリンさんやヴィオレッタさんに会わないように気を遣ったり、食堂を利用する際は誰もいないときに料理を取りに行って部屋に持ち帰ったり、もちろん大浴場は使わずに部屋の洗面台で体を洗ったり……そういう苦労はあるにはあるんだけどさ。


 ただそれにしたって、元々鹿苑寺家で息をひそめるように生きてきた僕にとっては、大した苦にはならなかった。


 いやむしろ、義母や兄たちから干渉されなくて済むぶん、「気が楽だ」とさえ言えるかもしれない――。


(まさに"住めば都"だ。僕、意外に海外生活向いてるのかもなぁ……)


 そんなことを思いながらバスの窓の外に目を向けていると、同じ制服に身を包んだ学生たちの姿がひっきりなしに流れていった。


 歩きスマホの男子生徒。大きな楽器を背負った女子生徒。たまに人目もはばからずに抱き合ったりキスしたりしているカップルを見ると、「さすが外国だなぁ」と思ってしまう。


 いずれにせよ、先週リーゼ先生に案内されて来た時の"がらん"とした雰囲気とは打って変わって、王立音楽学園のキャンパス内は大勢の学生たちで賑わっていた。


「――アンタ、もしかしてビビってるの?」


 ボーっと窓の外を眺めていると、急に隣に座っているありすさんが話しかけてきた。

 ――王立音楽学園の制服に身を包んだありすさん。


 黒地に赤と金色のラインが入ったスクールブレザー。プリーツスカートに、アニメや漫画に出てきそうなニーハイソックスもよく似合っている。

 ただ、トレードマークの金髪ツインテールの結び位置が、いつもより高いような……?


「ありすさんこそ、緊張してるんじゃないですか? ツインテールが高すぎません?」

「ギクッ! ……うっ、い、いやね、何を言ってるのよ! ア、アタシが、緊張なんかっ!」


 引き攣った顔で笑うありすさん。

 ……わかりやすく動揺が顔に表れているなぁ。


「っていうか、アンタの制服姿、やっぱりコスプレみたいね!」

「仕方ないじゃないですか。だって採寸もしていないんですから……」


 ありすさんは小馬鹿にするように僕の体を指でツンツンとつついてきた。

 男子の制服も女子と同じで黒地に赤と金色ラインのブレザー。それ自体はナポレオン・ジャケットみたいでカッコいいのだけど、いかんせん僕のはサイズがぶかぶかすぎて似合わない。


 まるで七五三みたいだ。

 まぁ急遽編入が決まって、既製品をあてがわれたから仕方ないけどさ……。


「でも、一体何なんですかね? この腕章――」


 僕は自分の左腕に巻かれているサッカーのキャプテンマークみたいなそれに目をとめる。

 白の腕章の中央に『牛』みたいなエンブレムが描かれていて、安全ピンで留めてあった。


 「そうしろ」と入学の手引に書いてあったのだ。

 何故か制服とは別の仰々しい箱に入っていた腕章は、『登校時には必ず着用の事』と但し書きがされていた。


「男子と女子で、デザインが違うのかと思ってたんですけどね……」


 僕は言いながらありすさんの腕章に視線を移す。

 ――ありすさんの腕章は『青地に狼』。


 ざっと車内を見回してみても、みんな腕章の色やデザインが違う。

 女子でも僕と同じ『白地に牛』の人もいるし、十円玉みたいな色の人もいる……。


(……どういう規則性があるんだろう?)


 僕が首を傾げていると、だがありすさんは意味ありげに、


「ま、アンタはそのうち上がってくるだろうから、気にしなくていいと思うわ」


 と呟いた。


「"上がってくる"? ……"上がってくる"って、なにがですか?」

「ま、そのうちわかるわよ――」


 ありすさんはそう言うと、口元をニヤリと歪めて笑う。

 ……まぁそんなこんなで、自動運転バスはいつの間にか、王立音楽学園の正面玄関ファサードに到着していた。





「……えっと、『G5-10』は――」


 一階のカフェテリアでクラス表を確認した僕とありすさんは、それぞれのクラスに向かって別々に歩いていった。


 僕は『G5-10』で、ありすさんは『G4-3』だ。

 残念ながら別々のクラスになってしまったけど、ありすさんは何故かそのことを知っていたかのように平然としていた。


「ま、いずれ同じクラスになるんだから、心配しなくていいわよ」


 ……いずれ同じクラスになる?

 意味がよくわからないけど、そもそも初めての海外留学でわからないことだらけなので、いちいち気に留めないことにした。


 それもこの一週間で身につけた"海外生活の心得"かもしれない……。

 まぁそんな感じで、フレスコ画が一面に施された広い廊下を歩いていたのだが――


「……あれっ? 『G5-10』の教室がないなぁ?」


 ――あろうことか、僕は迷子になってしまった……。

 言い訳をするわけじゃないけど、ここは整然と教室が並ぶ普通の学校ではなく『元宮殿』だから、あっちこっちに教室が分散していてわかりづらいのだ。


「や、やばい……。登校初日から遅刻とか、シャレにならないよ……っ!」


 さすがに焦り始めていると、ふいに男子トイレから出てきた金髪碧眼の男子生徒と目が合った。


 なんだか「頭の左半分だけ暴風雨に晒された」みたいな特徴的な左右非対称アシンメトリーの髪形をしている彼は、まず僕の顔を見、次に僕の腕章を見、それからまた僕の顔を見て、言った。


「ケイ・ロクオンジ?」

「えっ……?」


 急に名前を呼ばれて、僕はビクッとしてしまう。

 一瞬、腕章に自分の名前が書いてあるのかと思い、つい自分の腕章と彼の腕章を交互に見比べてしまった。


 ……それで気づいたのだが、彼の腕章も『白地に牛』――つまり僕と同じデザインだ。もちろん名前は書いてなかったけど。


「ケイ・ロクオンジだろ? それとも、人違いか?」

「い、いえ……そ、そうですけど……?」


 ……どうして僕のことを知っているんだろう?

 警戒していると、彼は笑った。


「そんなにかしこまるなよ。レッスンの時にリーゼ先生から聞いたんだ。『もうすぐ日本から凄い留学生が来る』って。……ヴァイオリン科なんだろ?」


 ……リ、リーゼ先生が?

 あぁ、そういうことか――。

 僕が納得すると、彼は続けた。


「俺もヴァイオリン科なんだ。クローデ・エルフィンストンだ」

「エ、エルフィンストンさん、ですか……」

「クローデでいいよ。それと、堅苦しい敬語は使うな。よろしくな、ケイ」


 彼――クローデさんはそう言って、濡れた手を僕に差し出してくる。

 トイレから出てきた人と握手するのは衛生面で気が引けたけど、僕は勇気を出してその手を握り返した。

 

「で、何をそんなところに突っ立ってんだ? もしかして、便所に入っていいか悩んでたのか? だったら安心しろよ、ここの便所は"ムーガ"しか使わないからな」

「……ム、ムーガ?」

「ほら、便所に行きたかったんだろ? 入れよ――」


 クローデさんはそう言って、男子トイレに向かって顎をしゃくる。

 僕は慌てて首を横に振った。


「……い、いや、『G5-10』のクラスを探してたら、迷子になっちゃって……」

「なーんだ、そんなことか。じゃあ教室まで連れてってやるよ。俺も同じクラスなんだ、見ての通り"ムーガ"だからな」

「ム、ムーガ……?」


 ――まただ。

 さっきから"ムーガ、ムーガ"って……一体何のことだろう?

 頭にクエスチョンマークを浮かべたまま、僕はクローデさんの後について廊下を歩く。


「――でもよ、なんでケイは"ムーガ"なんだ? リーゼ先生のあの言い方じゃ、てっきり"リノーシェ"か、ヘタすりゃ"獅子レオーネ"級の天才かと思ってたんだがな? 編入試験で手抜きでもしたのか?」


 ……リノーシェ? レオーネ?

 次から次へと飛び出してくるよくわからない単語に困惑しながら、僕はクローデさんの質問に答える。


「え、えーっと、ゼーン・ストラウク先生の推薦で、急遽入れてもらうことになって……。かくかくしかじかで――」

「ははぁ、なるほどな。つまりまだ"様子見"ってことだ」

「……よ、様子見?」

「ああ。ウチの学校に来るヤツは、まず最初にクラス分けテストを受けるんだよ。新入生だろうが留学生だろうがな。じゃないと"ムーガ"なのか"獅子レオーネ"なのかわからないだろ? だけどケイはそれを受けてない"裏口入学"だから、暫定的に"ムーガ"に入れられたんだろうな」


 "裏口入学"とハッキリ指摘され、僕は悪行を暴露された悪代官みたいな惨めな気持ちになった。

 いや、そんなことより――


「――あ、あのさ、さっきから何なの? その"ムーガ"とか"レオーネ"とか……」

「ああ、"グレード"って言った方がわかりやすかったかな?」

「グ、グレードって?」


 僕がそう訊くと、クローデさんはピタッと足を止めた。

 信じられないような目で僕の顔を睨んでくる。


「……おいおい、マジかよ? そんなことも知らずに王立音楽学園に入ってきたのか?」

「ご、ごめん……」

「ハァ、ったく。こりゃとんでもない天才か、とんでもない大馬鹿者かのどっちかだな。前者であることを祈るよ。ま、中に入れ――」


 クローデさんは言いながら、『G5-10』と書かれた教室のドアの前で僕の背中を押してくる。


 ……教室の中には同じ制服に身を包んだ男女がニ、三十名ほど。小さなグループに分かれてお喋りに興じていたり、一人静かに読書をしたりしている。


 白人、黒人、それにヒスパニック……。人種も肌の色も様々だけど、アジア系は僕一人みたいだ。


 ていうか空いている席に腰を下ろしたところで気づいたのだけれど、みんな同じ『白地に牛』の腕章を左腕に巻いているな。


 ……もしかして"ムーガ"って、これのこと?

 僕がそう呟くと、クローデさんは隣に座りながら頷いた。


「――ああ、そうさ。いいか、さっきの話の続きだが……この王立音楽学園では、すべてが『グレード』によって決まるんだ」

「グ、グレードで決まる……?」

「そう。学年や年齢ではなく――『グレード』が学園生活の基本単位になっている。まあいわゆるカースト制ってヤツだな」


 クローデさんはそう言うとポケットからスマホを取り出し、指で三角形のピラミッドを描きながら説明してくれた。


「――こうやってな、グレード1"獅子レオーネ"を頂点として、グレード2"リノーシェ"、グレード3"オーゾ"、グレード4"ルーヴォ"、グレード5"ムーガ"、そして最下位のグレード6"マヤーレ"へと続くんだ」

「ま、マヤーレ……」


 僕は思わず前のめりになってしまう。


「――つまりこの腕章は、学園内での俺たちの立場や地位を表す目印みたいなもんなんだ。例えば『黄金色に輝く"獅子レオーネ"の腕章』を見かけたら、俺たち"ムーガ"は頭を下げなくちゃならないし、道を譲らなくちゃならない。たとえ相手が1年生のガキんちょであったとしてもだ」

「へ、へぇ……」

「ケイは4年生か? ……じゃあ、年も俺と同じだな。逆に言えば、俺たちより下位グレード――"黒豚マヤージェロ"と蔑まれる真っ黒なグレード6の腕章を見つけたら、俺たちは道を譲る必要はないし、ふんぞり返ってりゃいいんだ。例え相手が5年生だろうと6年生だろうとな。ま、そんなわけでここはG5-10クラス……つまり"グレード5の10組"だから、学年関係なくみんな『白地にムーガ』ってわけさ――」

「な、なるほど……。クラス名の頭に付いている"G"って、グレードのことだったんだね……」


 そういえばありすさんは、『青地にルーヴォ』の腕章を巻いてたもんな……。

 グレード4ってことか……。だからクラスが違うのか……。


(へぇ、そういうことか……)


 僕はちらりと周りのクラスメイトに目をやる。

 言われてみれば、やけに大人びて見える人もいるし、明らかに僕より年下っぽい人もいる……。


 学年単位ではなく、グレード単位で、年齢はみんなバラバラ……。

 日本では"クラスメイトはみんな同い年"が当たり前だったから、なんだか変な気分だ……。

 

「だけど、専攻科は……? このクラスの人はみんな、僕たちと同じヴァイオリン科なの?」

「まさか。ピアノ科のヤツもいれば、指揮科のヤツもいるよ。クラスは専攻科関係なしに"ソルフェージュ"を学ぶ場所だからな」

「ソ、ソルフェージュって……?」

「おいおい、ケイ……。お前、本当にヴァイオリン弾けるのかよ?」


 クローデさんは呆れたような顔になる。


「ソルフェージュってのはな、いわゆる"座学"だよ。王立音楽学園の授業は"座学"と"実技"に分かれていて、"座学"では音楽理論や音楽史なんかをクラス単位で学ぶんだ。――つまり、それがこのクラスだ」

「へ、へぇ……。じゃあ、"実技"は?」

「"実技"は個人レッスンだよ。クラスは関係ない。それぞれの専攻科ごとに先生が何人もいるから、自分で予約を入れてレッスンを受けるんだ。ヴァイオリン科だったらリーゼ先生とかな。まあリーゼ先生は人気者だから、予約を取るのは大変だけどな」

「そ、そうなんだ……」


 クローデさんの説明のおかげで、僕は何となく王立音楽学園の仕組みを理解することが出来た。


 だけどありすさんが言っていた、「そのうち上がってくる」とか「そのうち同じクラスになる」とかいうのは、どういう意味だろう……?

 僕が疑問を口にすると、クローデさんは頷いた。


「ああ、王立音楽学園は実力がすべてだからな……。定期的に開催される昇格試験をパスすれば、グレードが上がる仕組みになってるんだ。まあ逆に降格しちまうこともあるけどな」

「しょ、昇格試験って……?」

「"学内演奏会"さ。まあその話は、おいおいわかると思うぜ。避けては通れない道だからな」

「そ、そうなんだ……」


 なるほど、ありすさんが言っていた「そのうち上がってくる」の意味は、そういうことか……。

 ただ、どうしても引っかかるのは――


「で、でも『降格することもある』ってことはさ、僕たち、マズいんじゃないの? グレード5だから、『下から二番目』ってことだよね……? 落ちちゃったら、一番下に――?」


 僕がそう訊ねると、クローデさんは眉間にしわを寄せる。


「……ま、まあな。だが、傷の舐め合いをするわけじゃねえが、グレード5の生徒数は全校の半数近くを占めているから、一番クラス数が多いんだ。ようするに平均的ってことさ」

「そ、そうなんだ……?」


 "平均的"と聞いて少し安心したのだが……。

 ふと気になってクローデさんのステータスを覗いた瞬間、僕は不安になってしまう――。



 名前:クローデ・エルフィンストン

 レベル:69

 TS:613

 AS:412

 MP:69

 スキル:≪チキンのトリル≫≪ボーイングLv.6≫≪アルペジオLv.6≫≪速いパッセージLv.6≫≪ポジションチェンジLv.6≫≪ビブラートLv.6≫≪トリルLv.1≫≪重音Lv.6≫……他

 称号:≪セミプロヴァイオリニスト≫


【チキンのトリル】……緊張と不安から2度上の音を誤って弾いてしまう。演奏時にTS/ASが50%低下。



 ……えっ、な、何それっ!?

 ひっ、低くないっ……!?

 ていうかなに、"チキンのトリル"って!?

 なに、"演奏時にTS/ASが50%低下"って……!?

 マイナス効果を持つバッドスキルなんて、初めて見たんですけど……っ!?


 ("2度上の音を誤って弾いてしまう"って、ただ手が震えてミスタッチしてるだけじゃないか……?)


 なんだか見てはいけないものを見てしまったような気がして、僕は気まずくて黙りこくってしまった。

 そんな空気を察したのか、クローデさんは隣でため息をつき、こう言った。


「……まあ正直に言うとな、"ムーガ"のままで卒業するヤツはほとんどいない。っていうか、ほぼゼロだ」

「ゼ、ゼロ……っ!?」

「ああ。最低でも"ルーヴォ"、出来れば"オーゾ"にはならないとな……」

「や、やっぱり……」


 そういえばリーゼ先生も言ってたよな……「卒業までたどり着ける生徒は半数にも満たない」って……。

 てことは僕たち、やっぱり"すでに崖っぷち"ってことじゃないか……。


「だ、だけど心配するな! お、俺たちはまだ4年生だぜ! 6年生になるまでに昇格試験をクリアして、這い上がればいいんだよっ……!」

「は、はぁ……」


 そんな感じで話しをしていると、帽子に作業服姿のオジサンが、モップとバケツを抱えて教室に入ってきた。

 清掃員か、と思って眺めていると、隣でクローデさんが言った。


「おい見ろよ、変なオッサンだろ?」

「清掃業者の人?」

「違うよ、あれがこのクラスの担任の、デルマー・デイトン先生さ」

「えっ、あの人、先生なのっ!?」

「ああ。極度の潔癖症で、授業の前にはああやってまず掃除をしてから始めるんだ……。床にジュースでもこぼそうものなら単位もらえなくなるから、気をつけろよ」

「う、うん……」


 そんな感じで、まるで清掃員みたいなデイトン先生はひとしきりの掃除を終えると、やっと教卓に立ち、


「――音楽家のキャリアとは、大量のゴミを小さなゴミ箱に無理やり詰め込むようなものだ」


 と、わけのわからない訓示を述べ始めた。

 僕はまるで清掃員に説教されているような気分で、それを聞いた。


「ちゃんとゴミ箱に収まるゴミは、わずか一割にも満たない。ほとんどが路傍のゴミクズになってしまう。外縁周辺にいる浮浪者の連中を見なさい。あの中には、かつてこの学園の生徒だった者が大勢います。つまりゴミ箱に入ろうとして、あぶれてしまった哀れなゴミたちが――」


 そう言ってデイトン先生はゴミ箱を教卓の上に置き、こう締めくくった。


「――君たちはこの小さなゴミ箱に収まるために、日々努力し、仲間を蹴落とし、過酷な競争を勝ち抜かなければなりません。これはゴミたちのサバイバルです。新学期が始まったということは、サバイバルが始まったということです。つまり、ゴミはちゃんとゴミ箱に入れなさい。わかりましたね?」


 ……なんだかよくわからない話だったけど、言いたいことは不思議と伝わってきた。


(王立音楽学園は"戦場みたいなもの"ってことかな……?)


 前にリーゼ先生も言っていたその言葉――"サバイバル"の意味を改めて思い出し、僕はなんだか背中がゾッとした。

 学内の競争に勝たなければ――。より上のグレードを目指し続けなければ――。


(――"あぶれたゴミになっちゃう"ってことか……)


 まぁそんな感じでデイトン先生のスピーチや、時間割や教材等の配布、ロッカーの割り当てなどがあり、初日の学園生活は午前中で終了したのだった。

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