大魔導師ナックラ・ビィビィの誕生
湖畔のナックラ・ビィビィ①
これは、少女ビィビィが、大魔導師ナックラ・ビィビィになる前のお話……。
西方地域【グリーン・ファングレイク湖】──その湖畔に建つ家に、常に愁いの表情で気持ちが沈んでいる、物静かな美少女『ビィビィ』がいた。
少女の父親で、占い師家系の『グレゴール』は、一人娘の行く末を案じていた。
(このままでは、娘の命が尽きてしまう)
ビィビィは、生天性の難病を抱えていた。
治療方法が無く、十八歳前後くらいまでしか生きられないと、医者から伝えられていた。
近所に住む同年齢の娘たちと遊ぶ時だけ、ヴィヴィは明るい表情を見せた。
ヴィヴィも、自分の余命については、近所に住むお節介なおばさんの口から、漏れ聞かされて知っている。
グレゴールは、占いと書物の知識で娘のヴィヴィを救う方法を探して、ついにその方法を発見する。
人里離れた洞窟に住む偏屈な西の老魔導師『ナックラ』の禁断魔導の力を、肉体に注ぐというモノだった。
(魔導師と関わりを持つと、不幸になると言われているが)
悩んだ末に、グレゴールはヴィヴィを連れて、西の魔導師が住む洞窟へと向かった。
グレゴールの話しを、静かに聞き終えた白髪の老魔導師が言った。
「娘の余命を延ばすコトは可能だ……だが、そのためには四つばかりの約束がある」
魔導師ナックラは、愁いを含んだ美少女ビィビィを眺めながら、意味ありな笑いを浮かべる。
グレゴールが聞き返す。
「なんでもします……その四つの約束とは?」
「まず一つは【延命の成功確率は半々というコトを承知しておくのだ】……治療ではない、病気の進行を遅らせるだけだ。儂は医者ではないのでな」
「わかりました、二つ目は?」
「【失敗をしても、儂を恨むな】……成功確率は半々だからな」
「決して恨みません、三つ目は?」
「これが一番大事なコトだ【娘を儂の魔導弟子として、差し出すのなら助けてやろう】……魔導生物を寄生させて、病気の進行を遅らせるのが目的だからな……魔導生物の力で娘は歳をとらなくなる」
グレゴールはヴィヴィを見る、ヴィヴィはうつ向いたままだった。この時のヴィヴィは、親の命令には逆らわない素直な子だった。
「四つ目は【父親は禁断の術の対価を、儂に代わってその身に受けて、肉体を入れ替えて生きつづけるコト】……そして、娘の延命が成功しても失敗しても関係無く、儂が作成途中の教典を広めるための教祖になるのだ……以上のコトが約束できるか?」
「お願いします」
グレゴールは、娘の同意を得ないまま。すべての条件を承諾して、ヴィヴィを洞窟に残して去っていった。
父親のグレゴールが去って数日間──ヴィヴィは、魔導師ナックラから与えられる魔導食を食べ続けた。
静かに食事をしている美少女に、目を細め微笑む老魔導師が言った。
「魔導力が宿りやすくする体質に改善する食事だ……この段階で、普通の人間なら多くが死ぬ」
魔導草のスーブで煮込んだ巨大なイモムシと毒コウモリを、切り分けて黙々と食べているヴィヴィに、ナックラは期待を抱いていた。
(この娘なら、儂の後継者になれるかも知れん……今まで何人も弟子の候補はいたが、食事の段階で逃げ出したり死亡した)
さらに数日間が経過すると、魔導食の影響なのか。
ヴィヴィの性格にも変化が現れ、ナックラとも会話をするように変わってきた。
「師匠、洗濯モノは他にありませんか?」
「今はそれだけだ……悪いな、男所帯なので身の回りにまで手が回らなくて」
整理整頓されていく洞窟の部屋に、ナックラは不思議と安らぎを感じた。
「気にしないでください……あたしは師匠の弟子ですから、好きなだけ雑用を言いつけてください……時間がある時は、夜も大丈夫です」
老魔導師の身の回りの世話を自主的にはじめた、ヴィヴィは余暇には魔導書を読み。
師匠の指導で、魔導力を高める修行も真面目に行った。
基礎的な炎の魔導、水の魔導、風の魔導、地の魔導、雷の魔導の五大元素魔導もヴィヴィは、通常の魔導師見習いなら早くても、数ヶ月かかるところを数日でマスターした──特にヴィヴィは地の魔導は得意で、動く小さな泥土人形を生み出せるまでになった。
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