告白者:【ぶらこんぷらいど】さん
初めてお兄ちゃんと呼んだ日
私は、大好きな兄を翻弄することが生きがいです。
「ねぇ、お兄ちゃん、デートしよ?///」
「お兄ちゃん、好きー、えへへ///」
「お兄ちゃん、結婚できなかったら私がしてあげる!///」
今では「お兄ちゃん」と呼ぶのは当たり前で、仲の良い兄妹で、私はブラコンとして生きていますが、初めからそうだったわけではありません。
今の関係になるまでに結構時間はかかってます。
そして、私がブラコンになったのも深い理由があります。その話はまたの機会に。
今回は、私が彼を「お兄ちゃん」と初めて呼んだ日の事をお話しします。
「お兄ちゃん」にはナイショですよ?
――――回想――――
ある日、私に兄ができた。
親の再婚だから、血は繋がってない。
お互い一人っ子同士だった。
でも、いきなり「今日からあなた達は兄妹です」って言われても、「はい、そうですか」とはならない。
再婚が決まって、顔合わせを何度かして、食事もして、1か月くらい経ってから引っ越した。
他人、しかも男と同じ家で暮らすことになった。
親の再婚に反対する気はなかった。でも、いきなり知らない男が自分の兄になることをどう受け止めればいいのか、どう接すればいいのかわからないまま数カ月経った。
兄となった男との会話はない。母と義理父とはなんとか会話する、そんな日々を過ごした。
月日が経って、男は社会人になり、親は仕事で海外へ行くことになった。
私はというと、志望高校の受験に落ちた。でも、興味本位で受けた通信制の高校に受かって、なんとか高校生になった。
私は一人、闇の中にいた。
通学がないから制服を着る必要はないが、自分のモチベをあげるため家の中で市販で売っている制服コスを買って着たり、メイクをしてみたりした。
正真正銘の現役JKなのに、まるでコスプレしている気分になる。
誰かに感想を聞きたいが、ネットに写真をアップしたくないし、親に聞くのは恥ずかしい。一人当てはあるが、聞く相手を間違えている気がする。
今でも男とはほとんど会話をしない。というか、同じ家に住んでいるのに全然会わない。
男の朝は早く、帰って来るのは深夜だ。
ある時、私は気が付いた。
「もしかして、私…避けられてる?」
そう思った私は、男を問い詰めるために、男の朝のルーティンと出勤時間、帰宅時間と夜のルーティンを記録した。
そして、遂に決行日。
金曜日の夜、仕事から帰ってきた男がリビングで寛ぐタイミングを見計らって話しかける作戦だ。
男は、いつものように夜のルーティンが終わってソファに横になって本を読んでいる。
「あ、あの…」
男とまともに話したことがない私は、緊張と不安でうまく喋れない。
男は、少し驚いた声で、
「えっ、あ、はい?」
男が、反応した。
「その…どう、思いますか?」
制服姿を見せる。
「えっと…何が?」
男は、何を聞かれたのかわかっていない様子だった。
((やっぱりムリ!))
「やっぱり、なんでも…なんでもないです!」
「あ、ちょっと待って、」
「…?」
まさかの展開に、頭が真っ白になる。
「あのさ、俺の話聞いてもらって、いいかな?」
男は、ソファに座り直すとゆっくり言葉を口にした。
「俺たちは親の再婚で、血の繋がりのない兄妹で、いきなり兄になれないし、妹にもなれないと思うんだ、知り合ってから、家族になってから時間は経ってるけど…」
男は言葉を探している様だった。
私は、頷く。
「一緒に暮らしてるけど、ちゃんと会話したことない。でも俺は、ちゃんと会話したいと思ってる。」
「私の事、避けてるのに?」
私は、口走ってしまった。
「えっ!?俺が?避けてないよ?むしろ、俺が避けられてると思ってたんだけど…」
私は、今まで言えなかった言葉たちを一気に吐き出すように喋っていた。
「だって、朝早いし帰って来るの遅いし、休日も部屋から出てこないし、ご飯も一緒に食べないし、私に何の連絡もなく何日も帰ってこないし、避けてないわけないじゃん!」
私が言い終わるのを待っていたのか、男が何か言いたそうにしているのを感じた。
「えっと…朝早くて夜遅いのは仕事で、部屋にいるのは資格の勉強中で…、ご飯は時間が合わないのかなと…、連絡をしないのは、連絡先を知らないから、代わりにいつも置手紙を…って、こんな感じで答えになってますか?」
私は、冷静に質問の答えを言う男に何故か腹が立って、
「…えっ、は?そ、そんなの嘘だよ、そんなの、仕事だって言えば、適当な言い訳すればいいと思って、それに私、置手紙なんか知らないもん、だって、なんで、違う…あ、そっか、私の事バカにしてるんだ、高校落ちたから、引きこもりだから…」
「嘘じゃないよ、バカになんか」
「…もういい!」
私は、男の言葉を遮ってそのまま玄関を飛び出し、どこに向かっているのかもわからず走った。
気が付けば、ここがどこかもわからない場所にいた。
外は暗くて周りの様子がよく見えない。
「…バカ!バカにすんな、バカ!」
私は、感情がぐちゃぐちゃで気が付けば泣いていた。
久しぶりの外出なのに夜で暗いし場所もわからないし、怖くなっていた。そう思っていた時、走る足音が聞こえてきた。
「はぁ、やっと見つけた…」
声で誰かすぐに分かった。
さっき私が八つ当たりした男だった。
男は、息を切らしている。
「帰ろう…」
「…」
「あ、雨、…雨降る予報だよ、だから、帰ろう、」
男は、嘘が下手のようだ。
「…ほっといてください、」
「それは、できない。」
「…いきなり、家族面しないでください、」
「別にそういうつもりはないけど、」
「じゃぁ、私に構わないでください…、」
少しの沈黙の後、男が言った。
「お互い、誤解してただけだろ?」
この男は、優しいのか、バカなのか。
「俺、兄妹喧嘩ってこんな感じかなぁとか思った。だから、別に何も気にすることないよ。」
「…バカなの?」
「バカって、言えるくらいの関係にはなってるよね、さっきも結構な勢いで怒ってたみたいだし、」
「あれは、その…」
私は、思い出すと恥ずかしくなって喋れなくなった。
男が、隣に座った。
「きっかけはどうあれ、今こうやって会話できてるし、やっと話せてすっきりしたよ。」
この男のことがよくわからない。何も知らない。当たり前だ。
私は無意識に逃げていたのかもしれないと思った。
私は、この男、兄とちゃんと向き合おうと思った。
((私、この人の妹なんだよね…義理だけど、))
「お、お兄ちゃん…、」
「ん?」
「///帰る!」
私は、恥ずかしくて顔を見られない様に先に歩き出す。
「家、こっちだよ?」
「///わ、わかってます!」
私は、再婚してから初めてこの男を”お兄ちゃん”と呼んだ。
――――――――
あの日をきっかけに、私とお兄ちゃんの間にあった誤解は解け、今では仲良しだ。
ただ、これが私にとって、悩ましい問題になるとは思ってもいなかった。
「お兄ちゃんだけど、義理だったら問題ないのかな?」
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