来談者 手紙
先生、お手紙でもいいって言ってくれて、嬉しかったです。文章を書くことはできるけど、人と話をするのは、ちょっと苦手だからです。もっと小さい頃はもう少し人と話せていた気もします。でも、だんだん、苦手になってしまいました。無理をして面白くないのに笑うふりをしたり、話について行けるように、テレビを見たり、そういうことをするよりも、自分の好きなことで時間を使いたいと思ってしまいました。
私は本を読んでいるのが好きです。本を読んでいたら、話しかけられる事がない私でも、教室に存在していていいような気持ちになるからです。だって、その時はただの座って読書をしている学生です。だからみんなのように誰かと笑ってしゃべってなくてもいいのです。そして、もしかして誰かに声をかけられたら、本から目線をその人に変えて、受け答えをすれば、たいていのことはなんなく一日過ぎていきます。
でも、そんな私にも、仲良くしてくれる子ができました。私が読んでいた本が、たまたまその子の読みたいと思っていた恋愛小説だったのが、始まりでした。私は好きな人がいませんが、本を読んでいると、自分も恋をしてときめいている気分になれます。その子にそんなことを話したら、実は私も同じと言ってくれました。そして、その子は、その子の秘密も私に話してくれました。二人だけの秘密もできました。
でも、その二人だけの秘密は、だんだん消えていきました。
先生、私には大切な家族がいます。でも、本当に欲しい家族はもういません。私には大切な友達がいました。でも、その友達も、もういません。
先生、なんでみんないなくなっちゃうのですか?
なんでみんなにはあるのに、私にはないのですか?
私が悪いのですか?
とても悲しいのに、悲しい顔をすると悲しませてしまう人がいるから、私は泣けません。せっかく一度は泣けるようになった私の涙は、また枯れてしまいました。なんで、何回もおんなじようなことを繰り返してしまうのですか?
どうしたら、普通のみんなみたいに楽しそうにできるようになれるのですか?
先生、教えてください。
私は何をすれば、みんなみたいになれると思いますか?
春から新しい学校へ行きます。その前に、私は今より少し変わりたいです。このままの暗い自分じゃない、みんなのような自分になって、無くしてしまった友達も、また新しく作りたいです。
先生に手紙でいいって言ってもらって、書いていたら、ちょっとだけ、心が軽くなった気がします。
お返事お待ちしています。
――山崎美子
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