藁人形 3

 「お父様とお母様ですか?」


 「いえ、いいんです、忘れてください」


 少女はそう言って扉の取手に手をかけた。


 「それは大変面白い。確かに、ございますよ」


 ―― え?


 少女が振り向く。


 「お父さんとお母さんあるんですか?」


 「はい、ございます。もとよりそれは古来より伝わる呪いのようなものでございまして、ちょうど本日こちらに入荷してきたものではございますが」


 女店主は、今日ちょうど入荷したばかりの藁人形を少女に差し出し、


 「このお人形になって欲しい人の顔を貼り、なぜ出てきて欲しいのかの祈りを捧げると、1日だけその人になってくれるというものでございます」


 と言って、藁で出来た人形を二つ見せた。一つは男、一つは女。


 ―― それってただの人形じゃないの?


 「こちらの人形になってもらいたい人の写真を貼れば、1日だけ、あなたのためにその写真の人がこの人形を使い、そのものになるのでございます。ただ、1日だけなのではございますがね」


 「それは、もう死んだ人でもいいのですか?」


 少女は聞く。女店主は胸元の襟を正しながら、


 「はい、もちろんでございます」


 と言った。少女は、それはいくらですか?と聞く。


 「お代は実際につかってみてからで結構です。使った方にとっての価値は私にはわかりかねますので」


 女店主はそう答えた。少女は一時考え、


 「それ、使ってみてもいいですか?」


 と言った。女店主はでは明日の同じくらいの時間に、また来ていただけますか? と聞くので、少女は必ず来ますと言い、その藁でできた人形の男と女をカバンに入れ、持ち帰ることにした。


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