第二十五話 いざ往かん! 我ら悪霊バスターズ
エルフ(じつはサキュバス)の
「ややこしいことになっとるけど、
「ややこしいことになってるのは、ほぼ私たちだけでしょ?」
この宝物庫探索のパーティーメンバーは、
「ていうか、宝物庫の
「だってさ、ヴォルタ姉さんってあの性格じゃん?
ヴォルタは、自分の背面に装備している武骨な
「うむ、今日の太刀筋も絶好調だ。宝物庫の化け物め、我が愛剣・テンペストで一刀両断にしてくれるわ!」
テンペストの切っ先を回廊の奥へと向けると、ヴォルタは高らかに
「はあ……ものすごい迫力ね」
その剣技と声量に圧倒された咲季は、そばにいたヴェルチェスカに思わず声をかけた。
「はいっ! ヴォルタ
咲季は少しだけ後ずさりすると、自分のお尻の部分をそっと手のひらで隠した。
「そ、それにしても、ヴォルタさん」
辺りを注意深く見回しながら、咲季はヴォルタに話しかけた。
「どうした? サキエル君」
「あの、ほ、宝物庫っていうから、せいぜい倉庫くらいの大きさかな? とか想像してたんですけど。でもなんだかここ、ものすごく広くありませんか?」
「うむ。この
(
(ああ、アレのごっつい大規模のヤツやな。おおかた、手当たりしだいテキトーに別次元をくっつけまくったんやろ)
「いまでは、この宝物庫がどれくらいの広さがあるかすら、だれにもわからないみたいっス。おまけに魔法の効果が暴走して、不定期に部屋の配置が変わるランダムダンジョンになっているとか」
ヴェルチェスカが、ヴォルタの話を補足した。入団したての彼女は、この宝物庫に入るのは初めてのようだ。
「ランダムダンジョン? それじゃ
今回の探索において、「無意識に周囲の様子をマッピングする」という自分の得意技のひとつが封じられてしまったことに、落胆の表情を見せる咲季だった。
「その通りだ。しかも、ここは王家最大の宝物庫。収められている美術品や工芸品は、どれも値がつけられぬほどの貴重な国宝ばかりだ。戦闘で派手に暴れて傷つけることなど、もってのほかだぞ」
「うーん、せやなぁ。暴れ牛の捻挫は
どこまでも伸びる薄暗い迷宮に、複雑に入り組んだ回廊と無数の扉。財宝を守りつつ、この広大な宝物庫から
「とにかく片っ端から扉を開けて、
そう言うとヴォルタ団長は、手近な扉のノブに手をかけた。
「ところで、団長はん。そもそも
旅人のランプに照らされた、薄暗い部屋の中で目を凝らしながら、カッシュが聞いた。この部屋の壁面には、大小さまざまな肖像画が飾られている。どうやら、名高い歴代王族の面々が描かれているようだ。
「ああ。実のところ我々は、宝物庫の
「実体がない? どういうこってんねん」
「なんと言っても、ここは
「っちゅうことは……」
「うむ。たとえば、幽霊か悪霊のようなものが取り憑いたのではないか、ということだな」
「ユーレイでっかいな! んなもん、一体どうやって見つけまんの?」
「心配するな、カッシュ君。そんなこともあろうかと、我々は魔法学術アカデミーに
そう言いながらヴォルタは、懐から人形のような奇妙なアイテムを取り出した。
「おお、団長閣下! それはなんでありますか?」
ヴェルチェスカが、興味深そうにたずねた。
「
「なるほど! どうやって使うのでありますか?」
「使用方法は、極めて
そう言いながらヴォルタは、
「はっ! 自分もお手伝いさせていただきます!」
「あんなんで、ホンマにユーレイの居場所なんかわかるんやろか?」
「でも、まずは敵を見つけ出さないことには話にならないしね……」
ヴォルタたちの探索を遠巻きに見ていた咲季は、壁に架けられていた作品のうち、ひときわ大きく立派な女性の肖像画にふと目が止まった。
「ねえカッシュ、この人って誰か知ってる?」
「ん? ……ああ、それは『グラシア女王陛下』やな。今のアリアス四世の先代国王にあたるお人や。この絵がどうかしたんか?」
「ふうん、これがグラシア女王か。この肖像画、どこかで見たことあると思ったけど、なーんか印象が違う気がするのよね」
色彩鮮やかに描かれた、ため息が出るほど美しいグラシア女王の肖像画に指を伸ばしながら、咲季はつぶやいた。
「……サキエル君、どうやらこの部屋には
ひと通り調査を終え、咲季のそばに近づいてきたヴォルタ。だが、その時である。
ピピピピピピピピピピ……
なんと、ヴォルタの手にしていた
「むっ?」
ヴォルタは
「サキエル君、この反応は一体……? いや、まさか!」
「わ、私はなにも……」
ヴォルタの眼が、
「だ、団長はん、これはちゃいまんねん!」
「動くな!」
鋭い表情で睨みつけながら、ヴォルタはカッシュを一喝した。
「フッ……。こんな近くにいたとはな。よもや、この私が
ヴォルタはそう言って、愛用の
続く
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