第二十四話 騎士団長の頼み、聞いてくれナイト
シュボッ
小さな音を立てて、「
咲季は、目の前に掲げていたその
「わあ……ホントに浮いてる……!」
「旅人のランプは、ダンジョン探索には必携の魔法アイテムや。とくに、探索者ギルドにも管理されてへんようなこないな
「うん」
カッシュの言葉に、咲季は納得するようにうなずいた。彼女にとって、迷宮探索用のアイテムをこうして「実際に」使ってみるのははじめての経験である。
考えてみれば当たり前の話だが、陽の差さない迷宮の暗闇が勝手に明るくなってくれるはずはなく、こうした魔法の道具が冒険の大きな助けとなる。この『ドラゴンファンタジスタ2』を、
「さて諸君、準備はできたか?」
「行くっスよ、サキエルさん!」
ヴォルタージェ団長とヴェルチェスカのよく通る声が、
「は、はい!」
前方に果てしなく伸びる回廊を見つめながら、咲季ははじめての「リアルな」迷宮探索に、どうしようもないほど高まっていく胸の鼓動を感じていた。
「宝物庫? ……
話は、一時間三十八分前にさかのぼる。
冒険者の食事処「
「うむ。王都アリアスティーンが誇る
ヴォルタは話の途中で、ジョッキに入った冷たいルートビアを流し込んだ。
「どうも最近、その宝物庫になにか『邪悪なもの』が住みついたらしいのだ。すでに、数人の死傷者が出てしまっている。中には、行方不明になった者もな」
「邪悪なモンって、なんですのん?」
「わからん。いまのところ、その正体を目撃した者はいない」
カッシュの問いに、ヴォルタはかぶりを振って答えた。
「人間なのか、はたまた
「はあ、そうですかいな。せやけどそないな狼藉モンなんか、あんさんたち
「うーん、まあねぇ。私たちだけで、どうにかできればいいんだけどねぇ」
「どういうこってっしゃろ?」
「ほら、私たち
ヴァニラやヴィヴィの言葉に、咲季は慎重に返事をした。
「——魔法、ですか?」
「そういうことだ、サキエル君。そこで君たち二人に、宝物庫の探索および正体不明の狼藉者の討伐に協力してほしい」
咲季とカッシュの方を指し示しながら、ヴォルタは依頼内容を告げた。
「なるほどなあ。お話はようわかりました。でも団長はん、王国付きの兵隊さんの中には、魔法使いなんてそれこそ
「ああ、もちろんだ。だが今現在、このアリアスティーンにサキエル君を超える
「……えーっと、正確なところは私もよくわからないんですけど、まあたぶん、だいたいそれくらい、かも……」
史上最強と
「それと、君のその
「えっ? こ、これですか?」
笑みがこぼれそうになるのを必死に抑えていた咲季だったが、その言葉を聞いて一気に現実に引き戻された。マドラガダラの
「私には専門的なことはわからないが、恐ろしく価値の高い超古代の
「……」
言葉には出していないがヴォルタは、うら若きエルフの魔導師には不釣り合いなこのウルトラレアアイテムについて、不審を抱いていることに間違いなかった。さすがに
「フフッ。まあ、こんな緊急事態だ。細かいことは抜きにして、我々の宝物庫探索に同行してくれないか? それで、君たちの素性や目的については一切を不問としよう」
(ねえ、どうすんの?)
(まあ、世の中にタダで
カッシュは、ため息まじりにそう
咲季は覚悟を決めると、まっすぐにヴォルタの方を見据えてこう言った。
「わ、わかりましたヴォルタさん。……そのかわり、宝物庫の探索が無事に終わったら、なんですけど……私からもひとつ、お願いしてもいいですか?」
続く
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