第二十六話 ワイとワイトのオカシなカンケイ?
「
そう叫びながらヴォルタは渾身の力を込めて、自分の背丈ほどもある
「……えっ?」
その剣が巻き起こした風圧を頬に感じた咲季は、恐るおそる目を開いた。するとあろうことか、ヴォルタの
「団長閣下! こ、これは、どうされたのでありますか!」
「……」
あまりのことに、困惑の色を隠せないヴェルチェスカ。ヴォルタはなにも答えぬまま、握りしめた剣の柄に力を込めた。ヴォルタの固有スキルである「雷撃の追加効果」によって、高電圧を帯びた
「見てみぃ、サキ!」
「あ、あれは……!」
カッシュの声に
ウギイイイイイィィィィィ!
その時だった。この世のものとは思えぬほどの苦悶と憎悪のこもった金切り声を上げて、漆黒の雲のようなものが肖像画の中から飛び出した。それに呼応するかのように、壁面に架けられていたそのほかの絵画もバタバタと音を立てながら乱雑に揺れる。
「みな、距離を取れ! 決して、あの黒い煙に触れるなよ!」
肖像画に突き刺さっていた
「ヴォルタさん、あの煙は一体?」
「あれは人間や物体に取り憑く
「ワイトクイーン……!」
この『ドラゴンファンタジスタ2』にモンスターとして登場する「ワイト」は、実体のない闇属性の
「ワイトは、憑依した対象の攻撃力や防御力、魔力などを取り込んで自分のものにすることができる。その憑依対象に、それ相応の力が残ってさえいればな」
「ほなコイツは、
カッシュは咲季の首元にしがみつくようにしながら、目の前で
「そうだ。肖像画に宿っていたグラシア女王の霊魂に取り憑いたのであれば、かなりの魔力を秘めていると考えざるを得んな。……なにをしているヴェルチェスカ、早くこっちへ来い!」
「え? は、はいっ、ヴォルタ
得体の知れぬ
しかし、つぎの瞬間である。ワイトクイーンの黒い煙の中に、巨大な
「ヴェルチェスカぁーっ!」
叫び声を上げるヴォルタ。咲季とカッシュも、目の前で起こった出来事を、固唾を飲んで見守った。
「ヴェルチェスカさん、どうなったの?」
「あの黒い煙に飲み込まれたっちゅうことは、まさか……」
ヴェルチェスカの全身を覆っていた黒い雲は、やがて霧散していった。彼女は、手にしていた巨大な
「目を覚ませ、ヴェルチェスカ!」
「ヴェ、ヴェルチェスカさんっ!」
「声デカ姉ちゃん、起きんかい!」
意識を失ったヴェルチェスカの元に、矢も盾もたまらず駆けつけた三人。それぞれが大声をかけたり、頰を叩いたりしているうちに、彼女はゆっくりとその目を開けた。
「……う、うう」
「おお、ヴェルチェスカ! 貴様、大丈夫か?」
その声には答えず、うつろな瞳のままヴォルタ、咲季の顔を見回していくヴェルチェスカ。だが、カッシュの顔を認識するやいなや、彼女はその目をカッと見開き、すばやく起き上がるとその首根っこを引っ掴んだ。
「ぐえっ! ……おいちょコラ、なにするんや!」
ヴェルチェスカはカッシュの体を抱きかかえると、その場ですっくと立ち上がった。そして驚いたことに、彼女は満面の笑みを浮かべながらカッシュの顔に頬ずりをはじめたのである。咲季とヴォルタはその様子を、半ばあきれた表情で眺めていた。
「ああ、やっと……やっと見つけたわよ、私の
「はあ? な、なんやってぇぇぇぇ!」
続く
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