第十八話 二人は今宵、朝まで楽しみマッセ!
現在の時刻は、午前六時ちょうど。星空が白みはじめ、王都アリアスティーンに朝がやってきた。
まだ街は眠りから覚めぬまま、大通りに人影はない。だがそこに、ちょうど反対同士の方角から歩いてきた一人と一匹が、互いにその顔を見合わせた。
「……あら」
「……おぅ」
どうやら咲季とカッシュは、この
「なんやその
「そっちこそ、それなによ?」
カッシュは右肢にみたらし団子と醤油団子と三色団子を、左にはごまあん団子とずんだあん団子とつぶあん
「せやサキ、見てみぃ! ついにこの王都アリアスティーンにも、和菓子屋が
興奮気味に力説するカッシュ。この猫の和菓子好きは話には聞いていたが、実際に食べているのを見るのははじめてである。もちろん彼は、王都の新しい名物になるであろう饅頭や団子を、すでに夜通し堪能してきたにちがいない。串を両手に持ち、甘いのと
「ほんで、そっちは何を
カッシュは、団子をムグムグ食べながらたずねた。
「あ、うん」
咲季は背負袋を地面に下ろし、中のアイテムを取り出しはじめた。
「まず、これが
つぎからつぎから出てくるソロキャンプ用品を、ポカンと口を開けながら
「これはなんや?」
「折りたたみ式の
そう言いながら、咲季はその
「……ね? ここの背もたれがゆったりしてて、なかなかいいでしょ?」
「ていうかジブン、
その言葉に、咲季は道具を背負袋にしまいながら口を尖らせた。
「べつにいいじゃない。快適に過ごせたほうが、旅のストレスも溜まらないし」
「そんなん言うたかて、ちょいと荷物多すぎやろ。こない持って歩かれへんで」
「ああ、それなら大丈夫よ……マドゥル!」
咲季の声に応えるように、彼女の手にしていたマドラガダラの
バタン!
大きな音を立てて、ふたたびページを閉じた
「
「はえ〜。いったいどこまで便利なんや、その
いつの間にか、マドラガダラの
「カッシュも、試しにこの中入ってみる? 意外と
「カンベンしてぇな。そんな本に挟まれて、平べったくなんのはイヤやで」
そんなことを言い合いながら、二人は商店街をあとにして歩きはじめた。
「それにしてもサキ。あないぎょうさんの
咲季とカッシュは昨晩からの疲れを癒すべく、手近な茶店に入って軽食を注文した。王都の
「うん、それがね。いろんなお店を回ってアイテムを見てるうちに、私もなんだか気分がハイになってきちゃってさ。気がついたら、けっこうお店の人とも会話できてたのよね」
「ふーん。そんで、アッチのほうは大丈夫やったんか?」
「アッチって?」
カッシュは周囲を見回すと、声のトーンを落として咲季の耳に
「アレやがな。ほら、サキュ……の
「あー、どうだろ? きのうはずっと買い物に夢中で、
「なるほどな。ようするに、それどころやなかったっちゅうことか」
咲季の
「ところで、これからどこに行くんや?」
「とにかく、次元転移魔法のヒントがほしいのよね。となると」
そのとき、茶店の
「お待たせいたしました、朝定食二人前でございます」
「やっぱり、魔法のことといったら、あそこしかないでしょ?」
「せやなあ、まあアッコしかないやろな」
テーブルの上でほかほかと温かい湯気を上げる料理を前に、咲季とカッシュは口をそろえて言った。
「王立魔法学術アカデミー!」
続く
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