第3話 純粋的な裏返し

朝、目が覚める。

隣には夢にまで見た彼女の姿。

あのあと、彼女は僕を居酒屋に連れていった。

何かを忘れようと無理に酒を飲む姿に、僕は何も言えずにつられて酒を飲んでいた。

そして、起きたらこの状態。

彼女の目が覚めたら、僕の気持ちを伝えよう。

いや、その前に何かあったかを聞かないと。

あ、その前にご飯食べるかな?

オムライスとか好きかな?

さすがに、朝から重いか。

彼女のために何ができるか、なんて頭を巡らせて、寝返りを打ってうなる彼女に目を向ける。

そんな幸せを描いたような部屋で、突然電話が鳴り響いた。

自分のスマホを確認する。

僕じゃない。

そっと彼女に近づく。握りしめたスマホの画面が光っているのがわかる。

一向に起きる気配のない彼女と、一向に止まらない電話。

手の中を覗くと、チラリと見えた知らない男の人の名前。

気にしないフリをして、朝ごはんを作り始める。

朝ごはんはオムレツにした。これなら、そんなに重くないはず。

彼女がよく飲んでいるブレンドのコーヒーも淹れて。

少し小洒落たランチョンマットまで引いてみた。

電話は五分おきになっていた。

彼女は未だに起きない。

ここまで必死にかけてくるなんて、もしかしたら何か重要なことなのかもしれない。

彼女を軽く揺さぶる。

一向に起きる気配はない。

意を決して、彼女のスマホを手に取った。

通話ボタンを押す。

「「あ」」

声が重なったのがわかった。

知らない男の人の声だ。

何か尋ねようと声を出す前に、電話が切れた。

冷静になろうと、冷たい水で顔を洗う。

鏡に映ったのは、どこか頼りない自分の顔だった。

電話のことをなかったことにすれば、きっと彼女とは付き合えるはずだ。

このことを追求しなければ、このままなし崩し的に結婚できるのかもしれない。

それでも、僕は。

バイト中に、彼女が言っていたことを思い出す。

「スマホのロックね、かけてないの。すぐに番号忘れちゃうから。」

そう言う彼女が心配で、もっとしっかりした人だと思ってたからそのギャップに惹かれて。

僕が守らないといけない、と謎の使命感に駆られたのを思い出す。

まるで遠い昔のようだ。

彼女のスマホを手に取る。

僕はそっとLINEのアイコンをタップした。

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