第545話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「大森高校―――九番―――ライト―――駒島君―――」


 駒島が右打席に立つ。


「ヨーガ―! 真夏の長野インドパワーじゃあ!」


 意味不明な言動で駒島が構える。

 佐伯が座り込み、ミットを構える。


「こいつで終いか―――」


 切間がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。


「ぬぅん! 天忠ぅ~! って感じで、へへっ…………」


 気持ち悪トーンで喋る駒島がヤケクソ気味にスイングする、

 真ん中にボールが飛んでいく。

 バットの軸上にボールが当たる。

 カコンッと言う金属音と共に―――ピッチャー上空に浮く。


「ワザと打たせて取らせますか―――」


 二塁の星川がそう言って、フライを処理する切間を見る。


「―――アウト!チェンジ!」


 審判が宣言する。

 フライを捕った切間がマウンドにボールを置く。

 香月高校のメンバーがベンチに戻っていく。

 駒島が無言でベンチに戻る。

 陸雄と星川も塁からベンチに戻る。

 戻る途中―――陸雄の頬に水滴が落ちる。


「んっ! そろそろかと思ったけど、雨が降り始める頃か?」


 ベンチの中野監督が気づき、松渡と坂崎に指示する。


「松渡―――坂崎と今のうちに肩を作っておけ」


「わかりました~! 坂崎、準備できてるよね~?」


「う、うん。捕手のレガースとか装着してるし、投げに行こう。


 ベンチ外で坂崎と投球で肩作りを始める。

 七回の表が終わり―――点差は10対10―――。

 同点のまま七回裏が始まる―――。



 ポツポツッと雨の水滴が少しずつ落ちるグラウンドの中―――。

 マウンドに陸雄が立ち―――ボールを拾い上げる。

 ハインが座り込み―――メンバーが守備位置に着く。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「七回裏―――香月高校の攻撃です。九番―――」


 九番打者が打席に立つ。

 ハインがサインを送り、陸雄が頷く。

 打者と陸雄が構える。

 陸雄がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中にボールが飛んでいく。

 打者がスイングする。

 打者手前でボールが右に曲がりながら落ちる。

 バットの軸下にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが低く飛ぶ。

 ボールはファースト方向に飛んでいく。

 星川がライナーを処理する。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。

 星川がボールを捕球して、打者がベンチに戻る。


(打たせて取らせるリードにしたが、ここに来てリクオの球威が落ちてきている。七回だからキツイか―――)


 ハインがボールを捕球する陸雄を見る。



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