第516話


 大森高校のレギュラーが守備位置に着いていく。

 マウンドのボールを陸雄がグローブで拾い上げて、構える。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「四回の裏―――香月高校の攻撃です。九番―――」


 九番打者が打席に立つ。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷く。

 打者が構える。

 セットポジションで投げ込む。

 陸雄の指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 打者がスイングしようとするが、途中で止める。

 ハインがミットを動かす。


「―――ボール!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに137キロの球速が表示される。


(やはり―――リクオにはまだ本調子じゃない。それどころか、球速が出来ているのに制球が早めだと厳しい)


 ハインが返球する。

 九番打者がバットを戻す。

 陸雄が捕球して、構える。


(全力ストレートを外角高めのギリギリに投げろってハインのリードだけど、ちとマズいな)


 陸雄がハインのサインを見る。

 陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

 打者がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 内角低めにボールが飛んでいく。

 打者がやや遅れて、スイングする。

 ボールが変化せずにバットの軸に当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが低く飛ぶ。

 陸雄が打球に向かって、グローブを構える。

 ピッチャーライナーのボールをそのまま捕球する。


「―――アウト!」


 球審が宣言する。


「ふ~、遅めのストレートを投げろってリードだけど、なんとかなったな」


 陸雄がそう言って、ロージンバックを拾い握る。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校、一番―――ピッチャー、切間君―――」


 切間が右打席に立つ。

 監督のサインを見て、切間が頷く。

 

(上位打線に戻ったとはいえ、今のリクオの状態じゃいつものリードは厳しい―――ここは)


 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、構える。

 切間が構える。

 陸雄がセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中やや低めにボールが飛んでいく。

 切間がスイングする。

 打者手前でボールが落ちる。

 バットの下をボールが通過する。

 そのままハインのミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに115キロの球速が表示される


(初球のチェンジアップはまだいつもより遅めか―――リクオ、今度からちょっと危険な賭けに出るぞ)


 ハインが返球する。



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