第500話
メンバーがベンチに戻る中で―――。
中野監督は考え込む。
(初見だからか―――下位打線は振ってこなかったな。代わりに上位打線は積極的に振ってくる。下位打線の打率もそこまで悪くはないはずだが…………)
大森高校のメンバーが攻撃準備に入る。
二回裏が終わり―――点差は3対1。
大森高校の優勢で終わる。
※
香月高校のレギュラー達が守備位置に着く。
マウンドの切間がボールを拾い上げる。
そしてウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「三回の表―――大森高校の攻撃です。三番―――セカンド―――九衛君―――」
左打席に九衛が立つ。
中野監督がサインを送り、九衛がそれを見る。
そしてヘルメットに指を当て、構える。
捕手の佐伯がサインを出す。
切間が頷いて、セットポジションで投げ込む。
九衛がジッと観察する。
指先からボールが離れる。
外角やや高めにボールが飛んでいく。
九衛がタイミングを合わせて、スイングする。
打者手前でボールが左に曲がりながら小さく落ちる。
九衛のバットの軸にボールが当たる。
「―――初球打ちだと!」
切間が声を上げる。
カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。
九衛がバットを捨てて、一塁に走る。
ボールが三遊間を抜ける。
「―――くっ!」
切間が後ろを振り向いて、ボールを目で追う。
レフトが前に走り、手前でバウンドしたボールを捕りに行く。
九衛が余裕を持って、一塁を蹴り上げる。
ボールを拾い上げたレフトがファーストに送球する。
九衛は二塁に行かずに一塁に残¥る。
ファーストのグローブにボールが入る。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
九衛が高笑いする。
「がっはっはっ! 今のスライダーは不味かったなぁ? せめてその場面はスラーブならカウント取れてたかもな」
「くそ! あの野郎に苦手意識持ちそうだぜ!」
切間が悔し気に言って、ファーストからボールを受け取る。
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