第499話


 陸雄が捕球する。


(よっしゃ! 二人まとめて三球三振。調子もちょっとずつ出て来たぜ!)


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――九番―――」


 九番打者が打席に立つ。

 ベンチの三岳達がマウンドを見る。

 監督と三岳が何かを分析しているようにも思えた。

 打者が構える。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 打者が見送る。

 打者手前でボールが右に落ちながら曲がる。

 ストライクゾーンギリギリの個所でハインのミットに収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに121キロの球速が表示される。

 ハインが返球する。

 陸雄が捕球して構える。

 三塁側ベンチの三岳が監督に話す。


「今のはイレギュラ-でしたね」


「ああ、だがこれで大体のところは解った。次からだな」


 監督が答える。

 その間に―――ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

 打者がジッと観察する。

 ベンチの佐伯が声を漏らす。


「次はストレートですか?」


 その言葉に三岳が嬉し気に笑う。


「みたいだな―――」


 三岳がそう言った後に―――陸雄の指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 打者が見送る。

 変化せずにハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに118キロの球速が表示される。


(ツーアウト、ツーストライク―――緩急も良くなってきた)


 ハインが返球する。

 陸雄が捕球して、構える。

 打者が少し間を置いて、構え直す。

 その後にハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。


「次も―――か―――」


 ベンチの三岳がぼそりと呟く。

 内角低めにボールが飛んでいく。

 打者が見送る。

 ボールは変化せずにハインのミットに収まる。


「―――ストライク! バッターアウト! チェンジ!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに135キロの球速が表示される。


「―――よっし! 三打者とも三振だ!」


 陸雄がマウンドで喜びの声を漏らす。

 ハインは妙な違和感を覚えたまま返球する。

 陸雄が捕球して、ボールをマウンドに置く。




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