弱小野球部の名誉挽回

第498話

　そう陸雄が思う中で―――。

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「香月高校―――八番―――」

　八番打者が打席に立つ。

　監督のサインを見て、構える。

　ハインがサインを送る。

　陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

　打者がジッと観察する。

　指先からボールが離れる。

　真ん中低めににボールが飛んでいく。

　打者がバットを振らない。

　変化せずにハインのミットに収まる。

「―――ストライク！」

　球審が宣言する。

　スコアボードに１３３キロの球速が表示される。

(真ん中でも振ってこない。思惑は解らないが―――リクオの緩急を取り戻す時だな)

　ハインが返球する。

　陸雄が捕球して、すぐに構える。

　打者がジッと観察する。

　指先からボールが離れる。

　外角高めにボールが飛んでいく。

　打者が見送る。

　変化せずにハインのミットにボールが収まる。

「―――ストライク！」

　球審が宣言する。

　スコアボードに１３５キロの球速が表示される。

(ようやく早めの球が投げれてきたか―――相手は打つ気配がまるでないな―――)

　ハインが返球する。

　陸雄がキャッチして、構える。

(どんな狙いがあるにせよ―――ここで)

　ハインがサインを送る。

　陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

　打者がジッと観察する。

　指先からボールが離れる。

　内角やや低めにボールが飛んでいく。

　打者がバットを振らない。

　打者手前でボールが半個分落ちる。

　そのチェンジアップをハインが捕球する。

「―――ストライク！　バッターアウト！」

　球審が宣言する。

　スコアボードに１１６キロの球速が表示される。

　打者がベンチに戻る。

(なんだ、この違和感は―――このイニングは抑えられるのに不安が残る)

　ハインが考え込み―――間を置いて返球する。