第497話


 二回裏が始まり、ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「二回の裏―――香月高校の攻撃です。七番―――」


 七番打者が打席に立つ。

 守備位置に着いていたメンバーが構える。

 打者が監督のサインを見て、その後に構える。

 ボールを握った陸雄がハインを見る。


(ここで陸雄にいつもの調子をつけさせなければ―――)


 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 打者のバットが動く。

 振る前にハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに131キロの球速が表示される。

 ―――陸雄のストレートだった。


(リクオのこの試合での制球力は良くなってきてはいるが、まだ球速に不安がある)


 ハインが返球する。

 陸雄が捕球して、構える。

 打者が構えを解かない。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 内角高めにボールが飛んでいく。

 打者が見送る。


(相手に打つ気配が無い? それとも見えていなのか?)


 ストレートがハインのミットに収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに126キロの球速が表示される。


(今のリクオにもう10キロ遅くしろとは言えないか―――)


 ハインが返球する。

 陸雄がキャッチして、構える。


(ストレート二球だ―――ここは―――)


 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中にボールが飛んでいく。

 打者が目でボールを追う。

 打者手前でボールが左に小さく曲がる。

 ハインのミットにスライダーのボールが入る。


「―――ストライク! バッターアウト!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに130キロの球速が表示される。


(ノーマルスライダーを要求したが、半端な球速になっている―――後半から安定させなければ不味いな)


 ハインがそう思い、返球する。

 打者が去っていく。

 陸雄が捕球して、一息つく。


(まずはワンアウト。でも、なんか今日は不調な気がするな。ハインは気づいているのかも?)





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る