第496話


「大森高校―――二番―――ショート―――紫崎君―――」


 紫崎が右打席に立つ。

 中野監督がサインを送る。

 それを見た紫崎がヘルメットに指を当てる。

 佐伯がサインを送る。


(確かにこいつにストレートはマズそうだな)


 切間がそう思い、頷く。

 紫崎が構える。

 切間が構えて、すぐにセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角の高めにボールが飛んでいく。

 紫崎が見送る。

 打者手前でボールが右に曲がりながら落ちる。


「フッ、今のが切間のカーブか―――」


 佐伯のミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに125キロの球速が表示される。

 佐伯が返球する。


「フッ、いつかの河川敷での一球勝負に答えてやるか―――」


 紫崎が構えを解かなない。

 捕球した切間が構える。

 佐伯がサインを送る。

 切間が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中にボールが飛んでいく。

 紫崎がタイミングを合わせて、スイングする。

 打者手前でボールがスライダーよりも深く左に曲がりながら落ちていく。

 その軌道を読んで―――バットの軸にボールが当たる。


「俺のスラーブをあの時と違って―――打っただと!」


 切間が声を上げる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが低く飛ぶ。

 ボールはサードライナーになる。

 サードが姿勢を低くして、グローブでキャッチする。


「―――アウト! チェンジ!」


 審判が宣言する。


「フッ、古川マネージャーの投球練習でスラーブをあまり打ててないのが俺だったな。今日の試合は俺にとっては厳しいな」


 そう言って、紫崎が打席から離れる。


「ちぇ! 追加点は無しかよ。中野の指示した盗塁はもう通じねぇしな」


 そう言って灰田が三塁からベンチに戻る。

 サードが切間に送球する。

 切間が捕球して、マウンドにボールを置く。

 ハインが一塁からベンチに戻る。


(結果として、キリマのスラーブをまだ攻略したとは言い難い。風があまり出ていないと言え雲行きも怪しい―――長引かなければ良いが―――)


 ハインがそう思い、ベンチに戻る。


「紫崎に打たれはしたが、俺の変化球は通じている。佐伯のリードはイマイチだしな」


 切間が三塁側ベンチに戻っていく。

 二回表が終わる―――。

 試合は3対1のまま、大森高校の優勢で終わる。





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