第472話


 その会話の中で鉄山先生がグラウンドにやってくる。


「練習休憩中にすいませんね。中野監督―――校長先生から差し入れです」


 鉄山先生が中野監督にそう言って、大きなスイカを渡す。


「わざわざ、すみません。ありがたくいただきます。柊、調理場でみんなに食べさせるためにスイカ切ってくれないか?」


 中野監督がそう言って、柊にスイカを渡す。


「わかりました。すぐに切ってきます。古川先輩、食器とか用意するの手伝ってくれませんか?」


「―――うん、いいよ」


 古川が柊と一緒にマネージャー室の調理場に向かう。

 メンバーが練習を遅めて、スイカを食べることになる。


「お前達。今日くらいはスイカをゆっくり食べて良いぞ。明日から遅れた分しっかり鍛えるからな」


 中野監督がそう言って、近くの野球用のベンチに座る。

 

「試合近い日なのに呑気にスイカ食べていいのかなぁ?」


 陸雄がそうボヤいて、ジュースを飲み終える。


「フッ、固い事を言うな。大切な試合が近いからこそ力を抜いて食べるんだ」


 紫崎がそう言って、おにぎりを食べ終える。


「はぁ? 何を訳分かんねーこと言ってんだよ? もっと選手としての自覚持てよ」


 陸雄が紫崎にそう言って、突っ込む。


「え~? 陸雄がそれを言うの~? 前の試合始まる前に清香ちゃんとアクアワールドでデートしてたのに~」


 松渡が横目でいやらしく笑う。


「こ、ここで言うなや!」


 陸雄が焦って、思わず立ち上がる。


「けっ! 彼女っぽいのとは結局はガチでお熱い関係だったのかよ! あ~、熱い熱い! 夏の暑さとダブルで顔から火が出そうだぜ!」


 灰田がそう言って、スイカを持ってきた柊たちを見る。

 陸雄が何かを言う前に―――黙り込む。

 そのままメンバーがスイカの乗った皿を受け取り、食べていく。

 陸雄がスイカを食べていくのを―――ハインが見て話す


「リクオ。デートでもうキスは済ませたのか?」


 陸雄がスイカの種をブッと吐く。


「こらこら! クールな君が何を真顔で言うんだよ!」


 九衛がそのリアクションに高笑いする。


「がっはっはっ! 相変わらず馬鹿だな、金髪。ヘタレのチェリーじゃ初回デートでも無理だろ。告白しても虫を見るような眼で見られて、あっさり振られるぜ! 撃墜撃墜っ♪」


「レンジ―――二ホンのレディはそんなのものなのか?」


 ハインの質問に九衛が珍しく突っかからずに答える。


「だろうよ。まぁ、俺様なら余裕でそれ以上のことをとっくに済ませてるがな! まぁ、せいぜい向こうから、迫ってされるがままだろうよ。がっはっはっは! 情けない事よのう!」


 陸雄が赤面して、九衛に話す。


「ば、ばかっ! 余計なお世話だ。俺は清香を幼馴染みとして大事にしたいから、そ、そういうことはしないんだよ! デートに見えるかもしれねぇけど、ただのお出かけなんだよ!」


「じゃあ、顔面込みで清香ちゃんにそう伝えておくね」


 柊から笑顔でそう言われ、スイカを食べ終わった部員達から皿を取っていく。


「ちょっと! 柊木マネージャー! えげつないじゃないですか!?」


 陸雄の顔が青くなる。


「うん。じゃあ、内緒にしておくよ。でも早くそういうことは済ませないっと女の子は愛想を尽かしちゃうよ」


「~~~!」


 柊の言葉に陸雄が顔を赤らめて―――下を向く。

 錦とハイン以外のメンバーが笑いながら、話題が盛り上がる。




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