第464話

 

「一番―――キャッチャー、ハイン。しっかりリードして、打ってこい」


「―――はい」


 ハインがいつもの冷静な表情のまま頷く。


「二番―――ショート、紫崎。お前ならハインに続いて、出塁できる」


「はい、任せてください」


 紫崎が頷く。


「続いて、三番―――セカンド、九衛。リボルバーで見た通り、調子も良い。頼んだぞ」


「へへっ、任しておいてくださいよ」


 九衛がそう言って、頷く。


「四番はレフト。錦―――敬遠されても点が入るようにしろ」


「…………はい」


 既に戻っていた錦が頷く。


「五番―――ピッチャー、岸田。先発から出来れば完投まで投げてこい」


 中野監督の言葉に陸雄が喜ぶ。


「もうベンチじゃないんっすね? 一回戦の時みたいに先発から最後まで投げれるんすね!」


「そういうことだ。朋也様は今回は外野手と打席に集中してもらう。だが、練習は投球練習は怠らないように―――」


 それを聞いた灰田が残念そうに俯く。


「わかりましたよ。ちぇ! 強面野郎とリボルバーしなきゃよかったぜ」


 中野監督がスタメン発表を続ける。


「六番―――ファースト、星川。おそらく今回もランナーがいる状態で打順が回ってくるケースが考えられる。クリンナップ打線として活躍しろ」


「わかりました。僕に任せてください! メジャーリーガーの為の成長の為です。来年は一番打者になりますよー!」


 星川がやる気全開で嬉しそうに答える。


「七番、センター、愛しの朋也様。今回は野手と打者として活躍するように―――」


「中野。やっぱ俺の登板で打たれまくったからこれから野手一本ですか?」

 

「そうじゃない。お前には投げたいという飢えが足りない。マウンドを譲りたくないという長所が足りない。六回戦に上がる時までにナックルボールを習得して、強くなるための期間だ」


「…………」


 灰田が思うところがあったのか黙り込む。

 中野監督がそんな灰田を見て、察したのかスタメン発表を続ける。


「坂崎はブルペンで控えの松渡の肩を作っておけ。万が一と言うこともある。五回戦の相手は兵庫四強の一校だ。今後も坂崎にブルペンで肩を作る役目をすることになる」


「は~い。わかりました~。坂崎~。人数不足だからしょうがないよね~」


「そ、そうだね……でも……出たかったかな」


 坂崎の言葉に中野監督が答える。


「安心しろ。来年は正捕手をお前にやらせる。兵庫四強まで来たんだ。来年の新入部員も試合ができる6人くらいは入るだろう。甲子園に行けばその倍は増える。そういうもんだ」


「わ、わかりました」


 坂崎が頷く。


「最後は、あー八番と九番はあのバカ二人だ。後で保護者に鉄山先生に頼んで電話で伝えておく」


 メンバーが大城の駒島の顔を浮かべる。


「よーし! 午後の練習を始めるぞ。準備は出来てるな?」


「「はいっ!」」


 大森高校野球部のメンバーが声を上げて、練習を再開する。




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