第463話


「九衛君。打者としての凄さを見せてください!」


 星川も応援する。

 紫崎とハインはじっとマウンドの二人を見る。


「灰田~。全力ストレートで試しに投げなよ~。九衛は生半可なストレートじゃあっさり打たれちゃうよ~」


 松渡も声を出す。


「朋也様ー! ファイト!」


 中野監督も応援する。

 柊がジュースのコップを回収して、洗いにマネージャーの洗濯機と炊飯器に調理場のある部屋に戻る。

 古川が食べ終わり、手を洗いに行く。

 そして―――リボルバーが開始される。

 灰田がクイックモーションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 九衛がジッと観察する。

 真ん中に真っ直ぐストレートが飛んでいく。


「踏み込みが足りんっ!」


 九衛がそう言って、フルスイングする。

 バットの芯にボールが当たる。

 カキンッという金属音と共にボールが高く飛ぶ。

 高く設置されたフェンスの一番上にボールが当たる。

 その高さからホームランの位置だった。

 マウンドの灰田が悔し気に拳を強く握る。


「くっそー! お前マジでエグいな。128キロの全力ストレート投げたぜ?」


「がっはっはっ! 帰りにアクエリアスとクリームパンな! いいかチンピラ野郎―――お前はまだこれからなんだ。ナックルボールとカーブしっかり鍛えればそれなりな投手になるんだ」


 九衛がそう言って、バットを下ろす。

 キャッチャーの坂崎がボールを捕りに走る。

 中野監督が松渡に話しかける。


「松渡。朋也様のナックルボールはここ最近どうだ?」


「そうですね~。一般的なピッチャーのナックルボールとそれほど変わりませんが、投げたいという飢えが足りないですね~」


「なるほどな。今までの試合で打たれ続けて、抑えたいという気持ちが無理と言う気持ちに下がりつつあるか―――オーダーを変えてみるか」


 中野監督がそう言って、マウンドの灰田を見る。


「何だよ、中野?」


 灰田がマウンドから移動して、不満げに話す。


「朋也様。次の試合だけ投手をするな。今回の試合の出番はセンターと打者だけでいい」


「―――は?」


 中野監督の言葉に灰田が唖然とする。


「お前達。午後の練習の前に次の試合のオーダーを発表する!」


 中野監督がそう言って、おにぎりを食べ終えたメンバーを集める。




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