第409話


 白石高校のレギュラー達が守備位置に着く。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「四回の裏―――大森高校の攻撃です。九番―――ライト―――駒島君―――」


 駒島が左打席に立つ。

 速水がロージンバックで滑り止めをして、構える。


「……存在自体がjoke(ジョーク)の長野産のキモデブはアウト・オブ・眼中……。本番は次の打席から―――誰かが確信してそう俺にmessage(メッセージ)を残した」


 速水が聞こえる程度の声で独り言を言う。

 打席の駒島が顔を真っ赤にする。


「なんじゃと! このクソザコポエマー! ワシを舐めるなよ!」


 そのままバットを高く上げる。

 ―――ホームラン予告だった。

 スタンドが笑いの渦に包まれる。

 山田がミットを構える。

 速水が構えて、投球モーションに入る。

 駒島が鼻息を荒げながら構える。

 速水の指先からボールが離れる。

 ど真ん中にボールが飛んでいく。

 

「ワシを……舐めるなぁ……二次ロリパワー完全開放ぅん!」


 駒島がバットをフルスイングする。

 速水の遅めのストレートと―――。

 ―――駒島のタイミングも空気も読めないプレイが偶然重なり。

 バットの芯にボールが当たる。


「「嘘っ!?」」


 ベンチの陸雄達が声を漏らす。

 カキンッという金属音と共にボールが浮き上がる。

 速水が飛んでくるボールを見上げる。


「……冗談じゃねぇ……打ちやがった」


 そのままセカンドがフライ体制に入る。

 駒島がバットを捨てて、仁王立ちで走らない。

 セカンドがフライを処理する。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。

 駒島が腕を組んで速水を見る。


「見たか! クソザコポエマー! ワシの無限の可能性の片鱗を! 長野から来た燃える球児―――駒島俊明(こましまとしあき)がここにありじゃあ!!」


 でかい声で駒島が速水に叫ぶ。


「君―――私語は謹んで―――黙ってベンチに戻りなさい」


 審判に注意され、駒島がバットを拾って戻っていく。

 ベンチの灰田が呆れる。


「なんでただのフライなのにあんな偉そうなんだ。あの長野のキモデブ―――」


 セカンドが速水に送球する。


「キャプテン。無駄球減らしただけ得っすよ!」


 セカンドのその言葉と同時に速水が捕球する。


「…………」


 速水は屈辱的だったのか、黙り込んで山田を見る。


「気にしすぎじゃんか。次切り替えるじゃんか!」


 山田がそう言って、ミットを構える。




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