第407話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「白石高校―――八番―――」


 八番打者が打席に立つ。

 ハインがサインを出す。

 松渡が頷く。

 打者が構える。

 松渡が投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 内角高めにボールが飛んでいく。


(早い! けれど、どうせ! フォークボールだろ!)


 相手の打者がスイングする。

 打者手前でボールが変化せずに高めのボールコースに入る。


「そんな! 誘い玉! フォークボールじゃない?」


 打者が声を漏らす。

 ハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに129キロの球速が表示される。

 ハインが返球する。

 松渡がキャッチする。

 一塁にいる速水が打者を睨む。


(……冗談じゃねぇ……俺をホームベースに返すさ……)


 打者がビクッとして、すぐに構える。

 ハインがサインを出す。

 松渡が頷いて、投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 相手の打者がスイングする。

 ややタイミングが合い―――バットの軸上に当たる。

 カコンと言う金属音と共にボールが浮き上がる。

 遅めにしたストレートをピッチャーフライにさせた。


「オーライ~」


 松渡がグローブを上げて、フライを処理する。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。

 八番打者がトボトボとベンチに戻る。

 一塁の速水が腰に手を当てる。


「……冗談じゃねぇ……god(神)が俺に帰塁させないと啓示を当ててるのか……? requiem(レクイエム)だぜ」

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