第405話
二塁ランナーの星川が苦笑する。
「1点差を守り切れば良いんですけど―――なんだか先が長そうですね」
二人がベンチに戻り―――。
白石高校のメンバーもベンチに戻っていく。
山田から送球されたボールを速水がマウンドに置き。
三回裏が終わる―――。
6対7で大森高校の1点差の劣勢となる。
※
四回の表―――。
大森高校のメンバーが守備位置に着く。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「四回の表―――白石高校の攻撃です。―――六番―――ピッチャー、速水君―――」
速水が右打席に立つ。
松渡がボールを持って、構える。
(さ~て、追加点をあげるわけにはいかないよね~)
松渡がハインを見る。
ハインがサインを送る。
松渡が頷く。
そして投球モーションに入る。
速水が観察する。
(……俺と同じサウスポーでありながらやや遅めの…………motion(モーション)……)
指先からボールが離れる。
外角の中心にボールが飛んでいく。
速水がスイングする。
(……ジャストミート、さ……)
バットの芯にボールが当たる。
カキンッという金属音と共にボールが三遊間に飛んでいく。
「ありゃ~! 初球打ち~!」
松渡が声を漏らす。
バットを捨てた速水が一塁に走る。
ショートの紫崎がバウンドしたボールを捕りに行く。
紫崎がグローブでボールを捕り終え―――。
塁を踏んだファーストの星川に送球する。
速水がスライディングする。
星川のグローブにボールが入る。
僅かに速水が早かった。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
「僕のフォーシームのストレートをインコースで打ったのに意外と足早いんだな~」
松渡が関心する。
星川が送球する。
松渡がボールを受け取り、打席を見る。
星川が速水に話しかける。
「速水さんって、野球やるきっかけってなんですか? 監督のお父さんに薦められたからですか?」
速水が一塁から立ち上がり、答える。
「……監督である父親に野球をすればプロ野球選手になって、アイドルと番組で会えてそのまま付き合えるから始めたのさ……」
真顔で答える速水に星川がクスクスと笑う。
「欲望に素直な人なんですね。僕はメジャーリーガーになりたいからです」
「……俺達に勝たなければそのdream(ドリーム)も掴めずに堕天使のように汚れながら堕ちていくさ……何も始まらないまま墜落していく……永遠に地面が見えずにどん底へ誘うのさ……」
そう言って、速水がリードを取る。
「……ちょっと詩人なんですね……詩集の同人誌か商業本が出たらアマゾンで予約しますよ」
そう言って―――星川が構える。
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