第403話


 三塁の錦がホームベースに走る。

 星川も二塁に向かって、走る。

 灰田がバットを捨てて、一塁に走る。

 前進するセンターの手前でボールがバウンドする。

 フェアになった時には―――錦がホームベースを踏む。

 センターがボールを拾い―――セカンドに送球する。

 星川がスライディングして、塁に触れる。

 セカンドが捕球する。


「―――セーフ!」

 

 塁審が宣言する。

 セカンドがそのまま久遠寺のいるファーストに送球する。

 灰田が一塁を蹴り上げる。

 ファーストの久遠寺がボールを捕球する。


「―――セーフ!」


 一塁の塁審が宣言する。

 ベンチの陸雄が喜ぶ。


「やったぁ! 6点目だ。これで1点差になったぞ! ナイス灰田!」


 中野監督が読みどうりだったのか、満足げな顔をする。


「やはり変化球で緩急をつけさせるパームボールを投げて来たか―――朋也様は前回の真伊已戦でパームボールに慣れが来ている。予想どうりに試合が運んだな」


 中野監督がそう言って、嬉しそうに灰田を見る。

 古川がスコアブックを書き終えて、中野監督に話す。


「パームボールを100パーセント投げてくると確信していたんですか?」


「ああ、投手任せの配球は変化球を投げればどうにかなると考える奴が多い。投手が優秀あればあるほど―――その悪癖が強まるからな」


「捕手のリード無くして能力の真価発揮せずですか―――流石です。中野監督―――」


 中野監督と古川のやり取りが終わる頃に―――。

 一塁の灰田がホッとする。


(自責点の1点は打席で返したつもりだけど―――中野のサインどうりだったな。何故か真伊已戦以来―――パームは何故か打てるんだよな)


 ファーストの久遠寺が速水に送球する。


「……冗談じゃねぇ……! ……攻略されるのは苦手さ……! 前情報も無しに打てるbatter(打者)こそ、Respect(リスペクト)の『R』をそいつのheart(ハート)に刻みたいさ……」


 速水が悔し気に捕球して、俯く。


「キャプテン。まだ1点差あります。僕たちの攻撃で取り返せるから抑えてくださいね」


 久遠寺がそう言って、速水をフォローする。

 他の白石高校の野手達も「キャプテン! 次に切り替えて!」っと声を出す。


「キャプテン思いのチームメイト……そんなお前達に最大の『R』を送るさ……」


 速水が打席を見る。

 灰田一塁―――星川二塁のランナーを残し、ツーアウトの場面になる。


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