第375話


 そのままサウスポー独特の投球モーションに入る。

 ハインはジッと観察する。

 速水の指先からボールが離れる。

 外角低めに真っ直ぐボールが飛んでいく。

 ハインが見送る。

 捕手のミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。


「結果オーライじゃんか!」


 捕手の山田がそう言って、返球する。

 速水がキャッチする。

 スコアボードに132キロの球速が表示される。


(ナカノ監督の言うようにフォーシームのストレートを投げて来た。次は―――)


 ハインが構え直す。

 捕手の山田がサインを送る。


(……冗談じゃねぇ……同じ配球じゃ読まれるさ)


 速水は首を振る。


(わかったじゃんか―――ピッチャー任せでいくじゃんか)


 捕手の山田がミットを構える。

 サウスポーの速水が投球モーションに入る。

 ハインがジッと観察する。

 ベンチの中野監督が陸雄達に聞こえるように背を向けて、話す。


「投手任せの配球はワンパターンなんだ……そして自分の勝負球に頼り切る……」


 ベンチのメンバーがその言葉を聞いて、打席を見る。

 指先からボールが離れる。

 真ん中高めにボールが飛んでいく。

 打者手前で左側に急激にボールが落ちていく。


(やはり同じ球速でスクリューが飛んできた―――)


 ハインがスイングする。

 バットの軸にボールが当たる。


「……なんだと……! どうなってる…………!」


 速水が声を漏らした時には金属音でボールが遠くに飛んでいく。

 ハインがバットを捨てて、一塁に走る。

 左中間にボールが飛んでいく。

 レフトとセンターがボールを追う。

 ハインが一塁を蹴り上げる。

 そのまま二塁に向かって走る。

 捕手の山田が立ち上がる。


「二塁目指しているじゃんか! ―――外野手は早く捕るじゃんか! タイムイズマネー―――ウォンチュー!」


 山田がそう叫んで野手達に指示する。

 レフトとセンターのやや左寄りにボールが落下した。

 それをレフトが拾い上げて、セカンドに送球する。

 ハインが余裕を持って、二塁を踏む。

 ボールが塁を踏んだセカンドに捕球される。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 一塁側スタンドから歓声が上がる。

 ハインのツーベースヒットになる。




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