第351話


 時間は戻り―――夕方頃。

 坂崎は勉強会を終えて、家に戻っていた。

 そして自宅で捕手の勉強をしている。

 一息ついて、今日の分の勉強を終える。

 そして―――図書館でハインから借りた捕手の本を熟読しながら、配球について考え込む。


(な、なるほど捕手は試合の裏方で目立たない。け、けれども試合全体をキャッチャーボックス視点から見れる。ほ、本当に大事で責任もあるポジションなんだな)


 捕手の教本を一通り読み終える。


「は、ハイン君の言った通りだった。し、紫崎君も捕手に限らず野球での当たり前のことを積み重ねていくことが大事。―――い、いつも電車でも言ってたから、今以上に練習頑張ろう」


 坂崎が両親が帰宅していない家の中でスマホを見る。

 石川県の強豪校の北鄭高校(ほくていこうこう)の記事があり、それを動画再生する。

 九衛と同じ見ていた内容に坂崎は考える。

 浜渡修一郎のインタビューを終えて、動画が終わる。


「た、確かにすごい投手だけど、捕手のリードがあるからすごいんだと思う。こ―――この投手(人)はそれによって強さを引き出せたんだ」


 坂崎がサイトを閉じて、スマホを置く。


(ぼ、僕今までゲーム以外に生きがいとかなかったけど、もっと野球頑張ってみよう)


 机においてあるスマホの高校時代の兄と中学の坂崎の写真を見る。


(ら、来年レギュラーになれて後輩作れるの嬉しいし―――野球って辛いこともあるけど、みんなといると楽しい。に、兄ちゃんだってきっとどこかで僕を見てくれるはずだ)


 坂崎は睡眠に入る準備をする。


「あ、明日は練習ばかりだから早めに寝よう」


 そう口に出して、布団の中で目を閉じた―――。



 同じく勉強会が既に終わっている夕方―――。

 松渡は祖母と祖父一緒に食事を終えて、食器を洗っていた。


(おじいちゃんたち試合の中継見てて喜んでたな~。食事の時も僕が映ってたの楽しそうに話してたし~)


 最後の食器を洗い終える。


(でも大学に進学しないと親孝行出来ないしな~。野球は九月までって割り切って練習しないと~)


 祖父に部屋に戻ると一言言って、自室に戻る。

 勉強を終えたので―――星川から貰ったバイクゲームを遊ぶ。

 バイクの選択場面でいくつかのバイクを松渡が見ていく。

 いくつかのバイクで操作ボタンを止めて、鑑賞する。


「このニンジャやカタナってバイク乗ってみたいけど、値段が中古でも六桁か~。カスタム代とか凄そうだなぁ~。カスタムしまくってもどこまで原型が残るかさじ加減が悩むなぁ~」


 思わず独り言をぼやく。


「大学入ったら車と二輪の免許取って 今年の九月からのバイト始めなきゃなぁ~。それに―――」


 少し間を置く。


「内定決まったら大学卒業になる卒論を終えて、バイクで一人旅したいなぁ~」


 松渡は言い終えて、寝る準備をする。


「大学行って内定取るのは先だけど~。甲子園に行けるのもだいぶ先だよな~」


 寝巻に着替えて、電気を消す。

 そのまま枕の上に頭を乗せる。


(僕の体や野球における思考力は今こうしてみんなと試合しているからこそ、大切にしてるんだよな~。今は僕一人の体だけじゃない―――学校や今日の図書館の勉強会以外に二十四時間常に野球と共にある体だよな~)


 そのまま目をつぶる。


(この気持ちや答えは甲子園に行くためにある、か~。どんなドラマがあるか、まだ仮定の中だからこそ見てみたい景色かも~)


 そう考えた後に松渡は明日の朝練の為にぐっすりと寝た。


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