第242話

 セカンドの陸雄が少しだけ移動して―――上空にグローブを上げる。


「オーライ、オーライっと!」


 パスッという音共にグローブにボールが入った。


「―――アウト―――チェンジ!」


 審判が宣言する。


「がっはっはっ! インフィールドフライじゃなくて、良かったな。チェリー!」


 センターの九衞が声を上げて笑う。


「スリーアウトですから、フィルダーチョイスでもないですしね。お疲れ様ですっ!」


 ファーストの星川がニッコリと笑顔を見せる。

 セカンドの陸雄がハッと笑う。


「どのみちアウトにしたんだから、灰田のおかげだろ? 灰田、次のイニングもやってやれ!」


 そう言って、陸雄は灰田に送球する。

 灰田が受け取り、マウンドにボールを置く。


「自責点が今大会初登板で出ちまったが……ピッチャーってのは打たれる時が来るしな。お前ら、サンキュー!」


 灰田がそう言って、メンバーと共にベンチに移動する。

 残塁していた真伊已がゆっくりと塁から離れる。


「―――四点取ったんだ。次に俺が抑えればセーフティリードを取って―――勝てますねぇ」


 そう言い残し、一塁側ベンチに行く。

 一回表は4対0。

 淳爛高等学校の優勢で終わる。



 一回裏の始まる僅かな間―――。

 ハインと紫崎がいつもの様にバッテインググローブを着ける。

 金属バットを持つ。

 中野監督がメンバーに助言する。


「真伊已のパームボールは揺れながら落ちていく。そのため芯に捉えにくい。横回転の加わるスライダーに近いのは古川の投球練習で身に染みているだろう?」


「「はいっ!」」


 メンバーが一部を除いて、返事をする。

 中野監督が助言を続ける。


「パームボールを打てるようになれば長打になりやすい、他の変化球に頼り始めてくるだろう。スローカーブとカーブにも警戒して、スイングのタイミングを練習道理に行うように―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「―――まもなく一回裏が始まります」


 淳爛高等学校野球部が守備位置に移動していく。


「ハイン、紫崎。初見で他にも仕掛けを持っている真伊已からホームランは期待していない。打ってこい」


「わかりました」


 ヘルメットを被ったハインがそう言って、打席に移動する。




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