第200話

「トモヤ。そういえばコンビニで最近出た商品のタマゴン君ナイトアイスのおまけ食玩で『謎の仮面騎士シャイニングドラゴンナイトキラー・フクロウ侯爵ゼノン』のシークレットを手に入れたか?」


「いやぁ、全然当たらねぇぜ。この前の帰りに嫌がる九衞を奢り条件で誘って、一緒に買ったんだけどさ。二人揃ってノーマル版の『ブラックダイヤモンドドラゴン狩りの復讐に燃える亡国の姫騎士ミーナ』が当たってよ。ダブってるから、もう三体目なんだよなぁ」


「オレはそれのシークレット版を二体持ってるから、ひとつをトモヤに譲る。明後日持ってくる」


「おっ、サンキュ! シークレットはバニラアイスよりチョコレートアイスの方が結構出るとかって、ネット情報マジなのかな? 俺もあのシークレット欲しいんだよなぁ」


 途中まで歩いていた灰田とハインが校門前で立ち止まって、熱心に雑談する。

 陸雄が話題でのアウェー感を受けながら、二人を黙って待つ。


「そうか―――オレも『謎の仮面騎士シャイニングドラゴンナイトキラー・フクロウ侯爵ゼノン』のシークレットを狙っているんだが、バニラアイスからチョコレートアイスに今回だけ変えてみるか……」


「もし当たったら、ヤフオクに出せば高額で売れるらしいから―――その金でプッチンプリンが70個くらい食えるぞ」


「70個も! おおっ……そんなに食べれるのか。帰りに在庫があったら、コンビニで買って来る。アマゾンでは売り切れ状態だしな」


 ハインが涎を少し垂らして、拳を強く握る。

 灰田がいたずらっ子の様な笑顔を見せる。


「最近じゃあ、地元でも転売ヤーが買い占めてるらしいぜ。見つけたら即買いしとけよ。あっ、もし『昆虫博士のネクロマンサー~共和国で暗躍する不死への探求者~トナティ・ブロスト』が出たら、ノーマル版でもトレードしてくれよ」


「それならトレードするのはノーマル版の『帝国の人体実験から逃れしインテリジェントマンティコアの元人間勇者バルフィルド』を用意してくれないか?」


「ああ、それなら結構持ってるわ。実は俺まだあれを一回も当てて…………」


「あれって? オレが持っている奴ならトレードしてやるぞ?」


「そう? じゃあ、業者のミスで少数生産になっているあの伝説の………」


「お・ま・え・ら・は・や・く・か・え・ん・ぞ!」


 良い笑顔からの陸雄のやや怒りの籠った声と共に、そのままハインと灰田の手を引っ張る。


「陸雄? 何怒ってんだよ? 歩くから手ぇ引っ張んなって―――利き腕に力入れるな。投げれなくなるぞ?」


 陸雄がサッと二人を掴んだ手を離す。


「そう言うことはメールか個人チャットで暇な時に話せつーの。試合控えてんだぞ? 中学生レベルの玩具の話を高校生にもなってするなよな」


 そしてため息をついて、肩を並べて歩く。


「リクオもタマゴン君ナイトバニラアイスとチョコレートアイスとおまけ食玩に興味を持つべきだ。オレのクラスで流行しているぞ? さぁ、恥ずかしがらずに買おう」


 ハインが目をウルウルさせて、楽しそうに話しかける。

 ややテンションが変なハインだった。


「買いません! 今月は幼馴染みにケーキ奢ったから、来月までうますぎ棒も買えねーつーの。まったくもー、そういう所は子供だよな?」


「むぅ……シークレットを売ればお菓子が大量に買えるナイスコンテンツなのに」


 ハインが残念そうにトボトボと歩く。


「高校生だからまだギリギリセーフ感があるけど、大人になったらそういうのもう卒業しろよ?」


 陸雄がハインを子供の様に叱っている。

 灰田がニカニカ笑いながら、そんな二人を見る。


(試合じゃハインのリードに従いっぱなしなのに、普通に話してる時は真逆みたいでっ昔なじみのバッテリーってのは面白いもんだな)


 そのまま陸雄達が夜になったいつもの練習帰りの通学路を歩いていく。



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