第198話
「ちょっと、僕まだ食べかけなんだけど~……」
灰田が同じく食べ終わり、松渡の肩に手を乗せる。
「はじめん、食うの遅いぜ。投げる球は早いのによー」
「褒めてるのか気遣ってるのか、解らないセリフだね~」
中野監督がおにぎりを食べ終えて、バットを持つ。
「おしゃべりは程ほどにして、そろそろ守備練習と投手は投球指導と指定球数だけ投球練習するぞ。後はいつも通りティーバッテイングやるぞ。いいな?」
「「はいっ!」」
メンバー達が母親の手作り弁当やコンビニ弁当を片付けて、グローブなどを装着する。
「さて、俺ははじめんとナックルボールの練習か。今日から風向き気にせずに室内練習場でやれるな」
灰田がそう言って、ハインの肩を叩く。
「トモヤ。最大十球投げ終わったら、ハジメと交代してナックルボールを投げさせる。それであの練習場から出るぞ」
「わかってまさぁね! んじゃシケた空気出しとらんで練習するがよ!」
灰田の時々でる九州訛りで捕手達と投手たちが室内練習場に向かう。
坂崎と陸雄だけ古川の投球指導の下でその間は練習をすることとなる。
「じゃあ、古川さん。今日も投球お願いします! 坂崎も捕れるようになってきたから捕球でハインの代わりになってくれるっすよ!」
陸雄が元気よく言うと古川は手をハンカチで拭く。
「どうしたんっすか?」
「おにぎりのご飯粒が指についたから拭いてくるね。投球に影響するから、岸田君も洗っておきなよ」
「アッハイ。ハンカチ無いんで手洗い所で洗ってきます」
そう言って、陸雄はダッシュで手洗い所に向かう。
松渡達はハンカチで手を拭きながら、練習場に入っていった。
「岸田君もハンカチ携帯すれば走らずに済むのに―――」
古川がそうボヤいて、ハンカチをしまう。
※
「よーし! 今日の練習はここまで! ハインと岸田と朋也様は罰として放課後追加練習! 他は早く帰れ。二年達は遅めに来るように言ってある。―――以上!」
中野監督からの言葉でメンバーが一礼する。
「「お疲れさまでしたっ!」」
放課後練習で陸雄とハインと灰田がグラウンドを走り込む。
他のメンバー達は更衣室に向かう。
「なんで俺だけ、私罰で走らされんだか……っち! 女心なんて解るかつーの! 陸雄もそう思うだろ?」
「いや、その後からはじめんに聞いたけど―――お前ら散々なこと二回戦でしたんだな。灰田は女心というか、日頃から余計な事言い過ぎなんだよ。だから、重い罰を受けるんだぜ?」
灰田と並走しながら陸雄は答える。
「そっかぁ? ってか、ハインだけ階段上りのうさぎ跳びを合計100メートルを免除して毎日10メートルにしてもらったから、ハインの方が俺らよりキツい罰だけどな」
灰田達の先頭を走るハインは走らされた後にうさぎ跳びを10メートル毎回やることが罰で決まっていた。
「同情するぜ。……あっ! 九衞の奴―――着替えた後にすげぇ良い笑顔で俺らに手を振ってる! ムカつくなぁ~!」
陸雄がそう言って、九衞を走りながら睨む。
ワザと九衞がスポーツドリンクを取り出して、良い笑顔で飲み干す。
ぷはぁ~っという昔のCМのようなワザとらしいオーバーリアクションに陸雄のイライラが増す。
同じく見ていた灰田が嫌そうな顔を向ける。
「強面野郎……普段よりウザさが二割増しだぜ。もう、ほっとこうぜ。今日は俺ら三人で帰っか?」
「そうだな。ハインの毎日のうさぎ跳びを待っている間に今後は素振りでもしとこうぜ」
「三回戦終わる頃には中野もハインの罰くらいは解除してくれるだろうさ。あと何週だっけ?」
「―――三週ある。みんな帰ったぜ」
陸雄がガッカリした声で灰田に答える。
ハインは走り終えて、階段でうさぎ跳びを始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます