第151話


 捕手が返球する。

 戸枝が受け取り、すぐに構える。

 捕手がサインを送る。

 戸枝が頷いて、投球モーションに入る。

 坂崎がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 内角真ん中にボールが飛ぶ。

 坂崎がスイングする。

 打者手前でボールが左方向に曲がる。

 バットの軸上にボールが当たる。


(俺のカーブを当てやがった!)


 戸枝が驚くと同時に金属音が鳴り響く。

 ボールはセカンド方向に飛んでいく。

 坂崎がバットを捨てて、一塁に走る。

 セカンド手前でバウンドしたボールがイレギュラーを起こす。

 ボールを捕り損ねる。

 セカンドがボールを追って、捕る。

 そのままファーストに送球する。

 坂崎が一塁に向かってスライディングする。

 ボールがファーストのグローブに収まる。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 坂崎が僅かに早かった。

 戸枝が唖然とする。


「どういうことだ? なんでスタメンよりベンチが強いんだ? くそ、ノーマークなのがミスになったか……」


 坂崎が一塁に立つ。


「や、やった……打てた。ぼ、僕やったんだ」


 坂崎が控えめにガッツポーズをする。

 ファーストが戸枝に送球する。

 戸枝が悔し気に捕球した。


「大森高校―――九番、ライト―――駒島君―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 駒島が左打席に立つ。

 駒島がバットを無言で構える。

 捕手がサインを送る。

 戸枝が頷いて、投球モーションに入る。

 ワインドアップでボールを投げ込む。

 真ん中高めにボールが飛ぶ。

 駒島はバットを振らずに見送る。

 ストレートがミットに収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 捕手が返球する。

 スコアボードに101キロの球速が表示される。

 戸枝が捕球する。


「ワシはどんな球でも初球は見送る主義なのだ。今のは余裕で打てたがな!」


 駒島がバットを構え直す。

 捕手がサインを送る。

 二球目のサインに戸枝が頷く。

 ワインドアップでボールを投げ込む。

 真ん中にボールが飛ぶ。

 駒島がバットを振ろうとして、中途半端なモーションで止まる。

 ボールがミットに収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。


「むう、ワシ的に今のはちょっと早かったな。体感的だが、133キロは出ていたはずだ。間違いない」


 捕手が返球する。

 スコアボードに107キロの球速が表示される。

 戸枝が捕球する。

 その時に駒島がホームラン予告をする。

 観客がドッと笑う

 気にせずに捕手がサインを送る。

 戸枝が頷いて、ワインドアップで投球する。

 真ん中やや高めにボールが飛ぶ。


「フンヌッ! 憤怒っ!」


 駒島がフルスイングする。

 ―――が、タイミングがまったく合わずに空振りする。

 ボールがミットに収まる。


「―――ストライク! バッターアウト!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに111キロの球速が表示される。




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