3話~「ミジャクジさま」事件~

山崎の一つ目の怪談話が終わり、


時間は0時47分…




次は高橋の番になった。




高橋「それじゃあ、次は僕だね。


山崎さんに比べれば怖さはないんだけど、怪奇は怪奇だからね。


…篤志君、日本の神様で『ミジャクジさま』って知ってる?」




高橋に話をする前に質問され、


篤志は日本史に興味が無く、


世界史で歯学部を受験したので知るはずもなかった。




篤志「いえ、知りません…何の神なんですか?


名前の後に『さま』って付けるくらいだから、すっげー偉い神なんすか?」




高橋「「あー、それじゃ。そこから話していこうか」




高橋の怪奇話はミジャクジさまの説明から始まった…





ミジャクジさまって言う神様はね。


日本の縄文時代から信仰されている神様なんだ。




土着神の一種で、御社宮司様や赤口様という別称もあるんだ。




他にも信仰携帯とかは地域ごとに違いがあるんだけど、


簡単に説明すると祟り神の一種っていう扱いが基本だね。




そのミジャクジさまは昔は人身供養という、


年に一度、人の命を捧げる信仰があったんだ。




もちろん今ではそんな危険なことはしないよ。




祟りがあると信じていた古代人が、


起きないように人身供養をしていたらしいんだ。




祟りって本当にあると思う?




無神論者には首を横に振るのが当然だよね。




けどね、実際に祟りはあったんだ…




それはミジャクジさまが登場するテレビゲームで起きたんだ。




ここの大学のOBが、一年間だけ某ゲーム会社で


アルバイトをしていてね。




その人の話を僕と同じ学部の先輩から聞いたんだ…




その人…名前は加瀬かせさんって言うんだけど…




当時バイトで採用された加瀬さんは、


神様が登場するゲームのナンバリングタイトル…


シリーズ物の制作に携わっていたんだ。




やっていることはデバックとかなんだけどね。




デバックって言うのはゲームに起きる不具合を見つけて、


開発スタッフに詳細を記した報告書を書いて提出する単純な作業なんだ。




壁の端を走り続けてキャラクターが壁に埋もれたり、引っかからなかったり…


レベルが99にカンストして、またレベル1に戻らなかったりとか…




ロールプレイングゲームならそういった不具合を見つける仕事なんだ。




開発途中のゲームにミジャクジ様もボスキャラとして登場してね…




最初は敬称無しのミシャグジだったんだけど…


開発中に関係者の間で怪現象が起こったんだ。




開発スタッフが熱を出して欠勤することが増えてきて…


その欠勤数が普通じゃなかったんだ。




47名も欠勤して、スタッフは制作が大幅に遅れたんだ。




それだけじゃ、なかったんんだ。




窓が閉まっているのに…


カーテンが風が吹いたように舞ったりもしたらしいんだ。




開発機材が停電したかのように、突然止まったり…




コンセントが突然焦げて絨毯に火がついて、


ボヤで済んだかと思えば焦げ目が人の顔みたいになっていたり…




悲鳴や泣き声の様に聞こえる効果音が入れてもいないのに、


不自然なところで流れたり…




ループが続いていた曲が突然止まって…


水の流れる音が延々と流れたり…




入れた覚えのない変な名前のアイテムが突然現れたりで…


スタッフは段々怖くなってきたんだ。




目や耳から血を流して死んだスタッフも出てきたときには…


信じていなかった社長も不安になって…


社長が神社で厄祓いを頼んだんだよ。




それで神主に言われたとおりに、


ミジャクジをミジャクジさまって名前にデータを書き換えたら、


その後は問題も起きずにスタッフも戻ってきたらしいよ。




それからは祟りはあると信じた加瀬さんとスタッフは、


最新作でも登場する際は『ミシャクジさま』に設定しているんだ。




そして制作の際にはスタッフ一同で、


お祓いに赴くのが恒例になっているんだ。




ミジャクジさまの祟りはある…そう思わないかい?







高橋の話が終わった。




篤志「自分だけ様付けなんて、偉そうな神だなぁ」




高橋「まぁ神様にもいろんな人がいるってことでしょうな。


僕も高橋様って可愛い女の子に言われたら気持ち良いもんさっ☆」




篤志「は、はぁ…」




高橋「…えっ?いやいやいや。男ならそういうこと考えちゃうもんでしょ?」




篤志「落ち着いてください…」




高橋「もう同い年なんだから、敬語はNGだよ」




美都「怖い話した後なのに楽しそうですね。次良いですか?」




篤志「やけにドライで事務的な対応っすね」




美都はスルーして、


次の女生徒の鈴木さんにお願いします、と小声で言った。




篤志はちょっとイラッ☆としたが、大人の対応で流すことにした。




鈴木「それじゃー次はー私かなー」




胸の大きな小麦色の肌のAラインのワンピースを着た鈴木は…




横目で胸をチラチラみる高橋を…


鈴木は嘲りの顔で見て、しょんぼりした高橋を確認した後に、


3つ目の怪奇話を始めた。




篤志(天然かと思いきや、ちょっとSっぽいな。

ありゃ、男をかなり吟味して選ぶタイプだな。

デートの時とか絶対に心の中で…

『私ってこんなにいい女だよ?あなたはそれに見合う男かしら?』って

試してそうなタイプだな。つまり俺にとってはNG(論外)…)




篤志は真剣に聞く表情を崩さず、


ぼんやりとそんな偏見まみれのことを思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る