2話~呪われた病院~

篤志は1人目の女性・山崎知子(やまざきともこ)の怪談話を聞くことにした。




怪談話で録音時の匿名性もあるため名前以外の自己紹介は省略された。




山崎「それじゃ私の話からね…ここからT駅に病院があったの知ってる?


廃病院で取り壊しがあったのに、


工事中に事故ばかりで封鎖されていた病院…


創立60年を絶たずに新しい病院を別の土地で建てることになって、


潰すことになった昔から色々あったいわくつきの病院でね…」




山崎の話は続く…







私の友達の先輩…まぁ面識ないから他人なんだけど…




伊達だてさんって人が、


そのいわくつきの廃病院を5、6人で肝試しに行ったことがあるのよ。




目的は単純なことよ。




廃病院を撮影して、後でコラ画像で加工して、


どこかの動画で再生数を稼ごうとか…


そんなことを思いついた仲間と面白半分で行ったの…




バカみたいな話よね…


四年生で進路も決まって浮かれてたってのもあるんでしょうね。




当然その時も工事中で夜は事故が多発してるせいで、


人は無人だったわ。




病院の外側を見回る警備員も数名はいたみたい。




伊達君たちは深夜2時に上手く入り込んで、撮影を始めたわ。




病院は取り壊しが半分終わってるみたいだったけど、


二棟ある内の一棟が瓦礫になっただけで…




残った一棟はほとんど工事が進んでいなかったらしいの…




早速彼らは懐中電灯をつけて、


スマホと小型の解像度が高いカメラで撮影したんだけど、


スマホは電波が張ってあるのに圏外になったらしいの。




変な音が聞こえたらしくてね…


公園の錆びたブランコの金属音って言えばわかるかしら?




それがスマホから聞えるらしいのよ…


2人が怖がって戻るって行って、


伊達君たちが答える前に早歩きで戻ったのよ…




のこり3、4人で集団心理が残っていたんでしょうね…


気にせずに院内に入って撮影したのよ…




入る前にね…


ガラス越しのドアに人の顔が半分映ってたのを見たって…




1人が騒いだのよ…見てもドアには何も映ってなくて…


伊達君たちは冗談で言ったと思って気にしてなかったわ…




むしろ笑いながら…


「その台詞を後で編集して…


ガラス戸に恐怖画像でも貼り付けて、


フォトショップのブラシツールでぼかそう」




って仲間と話していたのよ…




そしたらその映った顔を見たって人が、


汗をたくさんかいて進みたくないって行って走り去ったそうよ。




元々小心者だと仲間内で言われてた彼をほっといて…


2、3人で気にせずにカメラを回して病院に入っていたのね。




廃病院は照明も当然無いから、懐中電灯だけが頼りでね。




一階をグルグルと回っていたのよ。




暗闇の中で目が慣れ始めた頃に集中治療室の辺りで…




赤ん坊の泣き声とそれを大きな声で叱る女の人の声が聞えてきたのよ。




伊達君達は早足でその場を離れようとしていたんだけど…




後ろから風が吹いてきてね…




そこはドアの閉まった一方通行の長い通路で窓も無い場所だったの…


風なんて吹くはずがない…




すぐに走って入口まで向かったんだけど…


一人のスマホがマナーモードなのに、


突然大きな着信音を鳴らしているのよ。




入り口付近まで付いて明かりのあるナースステーションについた時に、


伊達君が着信音が鳴り続ける1人対して、




「スマホまだなってるから電源切れよ」




って言ってスマホを取り出した時に…




スマホの待ち受け画面が、




両目から血を流している真っ白な肌の子供の生首が映ってたの!




みんな叫んで彼はそのスマホを投げて走り出したわ。




入り口のドアを抜けた時に警備員のおじさんにぶつかってね。




逃げ出した仲間の学生が呼んだ見たいで、叱られたのよ。




みんな息を切らしながら汗はびっしょり…鳥肌が立っている人もいたらしいわ。




警備員が「こんなところで遊ばないで帰りなさい」って言って




伊達君が「すみませんでした。俺達呪われたりしてませんよね?」




って言って警備員を見たら…




警 備 員 が い な い の




何処を探してもいなくて、みんなパニックになって逃げだしたわ。




カメラも落として、そのまま足にぶつけて伊達君は転んだんだけど…




地面に転がって草しか映っていないはずなのに…


カメラの先には病室の二階の窓が映されていて…




窓に映っている真っ白な人の形をした光体が…


カメラの撮影中のモニターから遠近感を無視して…




モニターにどんどん近づいてくるのよ…


光の光体から顔の部分に口が出てきて…口の中から目が見えるの…




伊達君は叫ぶことも忘れて全速力でそこから逃げたそうよ…




その二か月後に病院は工事で壊されて、今は売地になってるわ。




伊達君達は怖くてしばらくスマホもパソコンもつけられずに、


家で震えていたそうよ。




心配した親が病院を薦めたんだけど、




「病院は嫌だ!あいつらが来る!行きたくない!行きたくない!」




って泣きながら叫んでいたそうよ…


今はみんな立ち直ったそうだけど…病院には行きたがらずに、


スマホもあまり見ないで電話に出る時は少し間があるって聞いたわ。




その病院はね、


人が死ぬことが他の病院より多かったらしいの。




夜勤の看護婦さん達も奇怪な人影や変な声を聞くことが時々あったそうよ。




今では病院の名前も変わって、


昔の病院名を言うだけでも怖がられて、


呪いの病院って噂されていたの。







山崎の話は終わった…




みんな、その時の光景を想像していたのか無言が続いていた…




山崎「これで私の話は終わり…次に行ってちょうだい」




篤志「この前耳鼻科行ってきたから…この話聞く前に耳が治って良かった~」




美都「篤志君、喋っちゃだめだよ…カット大変だよ」




篤志「悪い美都ちゃん…次、高橋さんだな」




山崎の話が終わり、教育学部2年の男子生徒、高橋の番になった。

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